Semisweet.
 流されるまま唇に近付いてくる、薄くて形の良い唇をすんなり受け入れてしまった。

 最初は触れて重なるだけの優しいキスをして、瑞野は私の顔を見つめてくる。


「…やわらか、気持ちいい。」

「…慣れてるくせに。」

「何、俺の事そう言うイメージ?傷付くなあ。」


 私の言葉で傷付きなんかしないくせに、傷付くなあと力の無い声で言っては、今度はまたゆっくり唇を重ね合わせて先程よりも長く密接させている。

 触れているだけなのにどうしてこうも満たされるのか。
 久し振りで、寂しかった?それとも相手が瑞野だから?

 絶対私はこの行為が終わったら酷く後悔する。
 瑞野と同期の一線を越えるつもりじゃなかったって。

 こんなに大事に優しく触れられたら絶対好きになるのも分かっていた。

 だけどもう男はこりごり。
 だから、流されて抱かれるなんてことも、瑞野を傷付けるのもこれで最後にするから。




☁︎ 𓂃𓈒𓏸





 甘い吐息の中、必死に瑞野の事を受け入れて首の後ろに手をやる。


「ごめん…っ、ごめんね…。」


 受け入れている最中なのに、思わず謝罪の言葉を口にして瑞野が余裕の無い表情で私を見つめては愛おしそうに大きな手で優しく頬に添わせてくる。


「何、何で謝ってんの?」


 そんな問いには答えられなくて、首を横に振るだけ。

 私もきっと瑞野が好きだし、元カレよりも先に瑞野を好きになって付き合えていたらきっと私は幸せだったのかもしれない。

 でももう、捨てられる時の苦しさを先に知ったから、捨てられてしまうかもしれないなら、もう私は誰かに愛されなくて良い。
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