Semisweet.
「菜穂は、別れてから元気だった?」

「…うん、まあ。大変、は大変だった。」

「君は、嫌がってくれると思ってた。俺との婚約破棄。」

「嫌だったは嫌だと思ったよ。でも、今は結婚しなくて良かったって思う。」

「何で?」


 そういう心当たりが1つも出て来なくて何でとか聞けちゃう無神経さ。そういう所でしょって言いたい。

 今更こんな事この人にいう意味はあるのかと思えば、無駄なエネルギーを使うし、この人のプライドを傷つけて面倒な事になるのも分かっている。


「…私、確かに仕事が好きでそればっかりで健斗の事おざなりにしてた。あなたの幸せを考えたら、これで良かったのかなと思った。」


 なんて思っても居ない言葉を吐いて、ミルクを一つ手に取りアイスティーの中に流す。

 貴方の幸せなんて祈るはずも無いのに、面倒を避けてプライドを傷つけない無難な言葉選びをした。

 私は別れた今でも気を遣ってどこまでも馬鹿な女だなと思う。


「俺は知りたかった。菜穂がどれくらい俺の事好きなのか。仕事と俺で仕事を取られたし、せめて縋ってくれると思ってたよ。俺の事本当に好きだった?」


 そんなくだらない理由で私の気持ちを図ろうとするな。

 手をグッとテーブルの下で握って表面上の表情だけは穏やかな笑顔を取り繕う。


「好きだったよ。だから尽くせたの。」

「…縒り戻す気はない?」

「ちょっと冗談でしょ。」

「離れて気付くことだってあるでしょ。やっぱり菜穂が良い。」


 これは予想外の話だった。
 やっぱり会うとろくなことが無い。

 あなたが今更私を選んでも、私はとっくにあなたを選ぶ気は無いのに、まだあなたはどこかで私を扱えると思っている。
 見下されている様な気にもなるのは、こういう所もだと思う。
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