Semisweet.
 家に着いて鍵を開けたら家の電気が点いていた。

 まさか…、帰ってないの…?

 驚いて玄関先で立ち止まっていると、奥から瑞野が顔を出してくる。


「おかえり~。」


 そんな緩い感じで出迎えてくれる瑞野に唖然とした。


「おかえり、じゃないし…。何でいんの?」

「あのね、お前の危機感ザル過ぎて怖い。鍵ポストに入れてけとか出来るわけないでしょ。せめて俺の事起こして一緒に出てくれたらよかったのに。おかげで家留守に出来なかったわ。」


 何でこの男昨日の事も何も無かった事みたいに話せるのか。

 言いたい事は沢山あるのに、今は別の意味で気が抜けてその場に崩れ落ちる。


「汚いだろ、そんな所で。てか、泣いた?メイクボロボロだけど。」


 そう言いながら私を立たせて顔を見ると、心配そうな表情でこちらを見ている。

 居ないと思っていたのに、まさかいるなんて思っていなかったから、尚更甘えてしまいそうになる。

 瑞野の胸元を軽く押して顔を背ける。


「…何。」

「泣いてない。」

「嘘吐け。仕事の事?それとも、恋愛の事?」

「瑞野には関係ない!」


 こんな所で瑞野に甘える卑怯な女にはなりたくない。

 今ここで甘えてもどうせ明日には、男なんて信用できないとか言って瑞野を突き放すのは目に見えている。

 私を好きな男にこれ以上期待をさせる事も傷付ける事もしたくない。
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