双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜
僕は彼女に目隠しをしてでも、側に置きたいと思ってしまう。

 必死にアピールしても、彼女は全く僕を好きにならない。
 それでも、僕はおそらく彼女以外愛せない人間だから手放せない。

 父がアイコンタクトで僕に部屋に残るように伝えている。

 彼女は父を治したら、レイリンと買い物に行くと言っていた。

 自分が父を治せない可能性を全く考えていない彼女は、無限の神聖力を持つと言われていた創世の聖女の生まれ変わりだ。

「ルイス、よくカリンを連れてきたな。来週にでもお前を立太子させよう。余は元々お前は皇帝の器だと思っていた。これから、カリンと共にパレーシア帝国を支えると良い」

 僕は初めて父から褒められた。
 それと共に、父が気分はリカルドでカリンを自分の女だとか言い出さなくてホッとした。

 僕は父にカリンが隠されていた理由と、アリアドネと交わした盟約の誓いを交わした事を話した。

「ルイス、想像以上だ。その程度の支援で創世の聖女が手に入るならばいくらでも援助してやれ。シャリレーン王国は異常な信仰で創世の聖女を手放したのだから哀れなものだな。カリンの出生地をパレーシア帝国と偽装しろ、創世の聖女が生まれるのはパレーシア帝国でなければならない」

「父上、アリアドネとカリンは双子です。出生地の偽装は難しいかと」

「シャリレーン王国も聖女を捨てた国と笑いものにならずに済むだろう。それに本当にカリンとアリアドネは似ているのか? 余はカリンのような女は世界に2人と存在しないと思ったぞ」

 確かに僕も、カリンを見た時アリアドネと似ているとは思わなかった。
アリアドネがシャリレーン王国の名誉を優先し、カリンの出生地を偽装することに同意することは予想できる。
(カリンの方はどうだろう⋯⋯)

 カリンにアリアドネとの取引した話もできていない。

「ルイス⋯⋯何を悩んでいる。パレーシア帝国の利益を優先するんだ。お前がカリンに惚れていることは直ぐに分かった。彼女の未来にとっても、帝国の皇后になる方が良いと思うぞ」

 父は僕がすでにレイリンと婚約破棄の話をすすめ、カリンを正妃として迎えようとしていることにも気がついている。

 「父上、僕はカリンの気持ちを得てから、彼女に真実を話し結婚を申し込もうと思っています」
 セルシオ国王を愛している彼女を振り向かせるのは容易ではないだろう。
 でも、彼女の心を得ないまま、勝手に事を進めて彼女に嫌われるのが1番怖い。

 「カリンを無理矢理にでも抱いてしまえ。創世の聖女とて、所詮は女。抱かれて仕舞えば情を持って、子を孕めば愛情を持つだろう」
 父の言葉に初めて苛立った。
 カリンの意思を無視するような真似が僕にできる訳がない。

 
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