双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜
「ルイス・パレーシア皇子殿下に、アリアドネ・シャリレーンがお目にかかります」

 招待客のリストや肖像画で僕のことを確認していたのか、僕の名前を呼んで挨拶してきた彼女に愛おしさが増した。今にも彼女を抱きしめて愛したい衝動を必死に耐えていると、信じられない言葉を掛けられた。

「カ、カルパシーノ王国は火気厳禁なのです。ルイス皇子殿下⋯⋯この建国祭が終わったら2度とこの地を訪れないでください」

 僕が貴重な火の魔力を持っていることは有名な話だが、まるで爆弾のように暴発するとでも思われているのだろうか。彼女に僕のことを怖がらずにいて欲しくて、滅多に見せない火の魔力を披露した。
 
 その途端、彼女の連れている少年は泣き出し、彼女は少年を守るように僕の元から去ってしまった。

 カリンに出会ってから彼女のことばかりを考えていた。

 今まで皇帝になることばかり考えていたのに、一瞬で恋するただの男になってしまったようだ。
(今晩の舞踏会にカリンは現れるだろうか⋯⋯)

 舞踏会会場にセルシオのパートナーとして現れたカリンの美しさに息をのんだ。彼とペアになるような赤いドレスを着ているが、彼女に1番似合うのは多分赤じゃない。
 彼女に似合うのは淡い桃色かクリーム色だ。自分の瞳に合わせるような色を着せ所有物のように彼女を扱うセルシオ国王に殺意が湧いた。

(僕だったら、彼女の魅力を引き出すことを1番に考えるのに⋯⋯)

 開会の合図のダンスをセルシオ国王とカリンが踊るのをずっと見ていた。

 カリンはダンスを習った経験などないだろうに、きっと短期間に必死に練習したのだろう。
 そんな健気な彼女を想像して、ますます胸がいっぱいになった。

 2人のダンスが終わると同時にカリンにダンスを申し込みに行った。

 女神のような彼女を目の前にして思わず跪いてしまい、注目を集めてしまった。
(2曲続けて踊る体力は残っているだろうか、疲れたら僕に体を預けるように伝えよう⋯⋯)

 ダンスの最中、僕がアリアドネを褒めるとカリンは目を輝かせて喜んだ。

 
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