双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜

2.どうやら昇天しちゃったみたいね。

 2週間ほど船に揺られて、パレーシア帝国の皇城に到着した。

 陸路では半年以上かかる道のりも海路だと2週間で到着する。

 移動中も私はセルシオの首を頑なに離さなかった。
 帝国に到着するなり首を取り上げられてしまったが、私は必ず笑顔のセルシオを取り戻す。

  この2週間、何度もルイス皇子が対話を申し込んできたが、無視を決め込んだ。
 私の夫を奪った男の話など聞く必要はない。
 彼は私にとって夫を取り戻す為の生贄でしかない。

 見たこともないような豪華絢爛な皇城の内部に入ると、皆が私に頭を下げてくる。パレーシア帝国は聖女信仰があついからだろう。

 到着するなり、浴室に連れて行かれメイドに体を洗われた。
 浴槽に浮いているの真っ赤なバラの花びらが、愛おしいセルシオの血しぶきに似ている気がして私は憎しみを深めた。

 メイドたちの会話から、私は今晩ルイス皇子に献上されることが分かった。

 しかし、ルイス皇子もここにいる周りの人間も私が何をしようとしているか知らない。

「すべてご準備が整いました。カリン様、こちらでルイス皇子殿下がいらっしゃるまでお待ちください」

 浴室から出されると、繊細なレースが美しいシュミーズドレスに着替えさせられた。

 寝室で待つように言われ、私は部屋の中を物色した。
 書くものが全く見つからず、私は思いっきり自分の右手の人差し指を噛み切る。
 指からうっすらと血が滴り、私はもっと血が欲しくて反対側の手の人差し指も噛んだ。

 ベッドの下に潜りこみ、両手を使い魔法陣をかいた。

「おい、何してるんだ? そんな所に隠れても白い足が見えてるぞ」

 突然足を引っ張られ、ベッドの下から引き摺り出される。寝間着姿で微笑んでいるルイス皇子と目が合った。
 
< 4 / 137 >

この作品をシェア

pagetop