双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜
シャリレーン王国にも隠し通路があるが、屈んで人が1人通れるレベルのものだった。
 まるで恩人のようにカルパシーノ王国の創建に手を貸しながら、帝国はいつでもこの国を攻めて奪えるようにしている。

(ベリオット・パレーシア、かなりの曲者だわ⋯⋯)

 確かに現在のカルパシーノ王国はセルシオ国王が商業を発展させ、教育機関もつくっている。
 それゆえ、国民のセルシオ国王への尊敬の念が強い。
 帝国の領地にして、遠方の帝国から貴族を派遣するよりもセルシオ・カルパシーノを王にして取引した方が良いと考えたのだろう。
 
「アリアドネ、よく来てくれたな」
 ルイス皇子の声が明るすぎて驚いてしまった。
 もっと、低い声で淡々と喋っていたはずだ。
(まさか、替え玉?)

 隣には、仲が悪そうに見えたレイリン・メダン公爵令嬢までいる。
 含みのある笑顔で私を見ているのは、私がルイス皇子から切られる瞬間を見に来たのだろう。
 なんと視野の狭い残念な貴族令嬢だ。

 私はシャリレーン王国に女王として戻るアリアドネ・シャリレーンとしてパレーシア帝国の次期皇帝と交渉しに来ているのだ。
 


 
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