最強で、最孤


一方その頃、瑠那は外部の道場で打ち込み稽古を終え、水を飲んでいた。

「......試合、近いな」

ひとり呟いて、自分の手を見る。

マメは潰れ、手の皮は分厚く、固くなっていた。

けれどその痛みすらも、彼女にとっては心地よい。

努力の勲章なのだ。

「私は、部活じゃない場所での稽古を自ら望んだんだ」

そう言い聞かせるようにして目を閉じるが、やはり胸の奥がざわついている。

彼女の知らないところで、部員たちの焦りもまた、高まっていた。
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