キスは契約違反です!! ~年下御曹司と期間限定ルームシェア~
 ふっ、と如月くんの面差しから獰猛さが消える。

「時間切れですね」

 残念そうに囁いた如月くんが、ぱっと私を手離した。は、と私は大きく息を吐く。世界が朝の眩さを取り戻すなか、ピピピと鳴り続けるアラームを如月くんが止めた。私の服の隣に置かれていた、私のスマホのアラームだった。平日は、毎日同じ時間に鳴るように設定してある。

「そろそろ支度をします」

 そう言って、如月くんは部屋を出ていった。
 残された私は、しばし気抜けしたあと、おずおずと服を引き寄せた。





 バスルームを使っていいと如月くんに言われた。だけど、しどろもどろに辞退して、慌ただしく如月くんのマンションを出た。

 如月くんのマンションは、ラグジュアリーなタワーマンションの高層階で、エントランスに下りるまでにかなり手間取った。うちの営業のお給料でタワマン? ご実家が裕福なのかな――などと、ささやかな疑問が頭に浮かんだものの、すぐに他の思考に呑まれた。

 さすがに、三日連続同じ服で出勤はできない。でも、こんな早朝じゃ服なんて買えないし、翔太がいるマンションにも戻れない。午前休を申請して、カフェで時間をやり過ごして、10時の開店と同時にファストファッションのお店で服を買って……ああ、シャワーも浴びないといけないし、じゃあ最近通えてなかったジムでシャワーを借りて着替えて――。

 ……何で、こんなことになっているんだろう。

 幸せだと思っていたのに。
 順風満帆だと思っていたのに。

 ――ぎゅ、とくちびるを噛んで、風を蹴飛ばすみたいに、カツンとパンプスのヒールを鳴らす。
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