キスは契約違反です!! ~年下御曹司と期間限定ルームシェア~
 如月くんが、私の耳元へ手を伸ばす。こめかみに指先が触れて、私がわずかに肩を竦めても、今度は呆気なく手離されたりはしなかった。

 指先は輪郭のなだらかさを伝い、耳横の髪をそっと梳く。その流れのまま一束を掬い、丁寧に持ち上げて、髪先へとキス。

「……っ!」

 息を呑んで、今度こそ大きく肩を竦めた。視線を逸らして、俯いて、如月くんの眼差しから逃げようとする。

 だけど、

「逃げないで。……思い知って」

 低い声で囁いた如月くんが、私との距離を詰めてゆく。顎先に人差し指を引っ掛けて上を向かされた、そうしたら、ごく間近で眼差しが絡む。

「ずっと……先輩のことが好きでした」

 まるで、祈るみたいな切実な声。
「わ……私は、だって……如月くんは後輩だし、」

 上擦った声で、かろうじてそう言った。あなたをそういう目で見たことはないって、しどろもどろの言葉で突っぱねようとしたけれど。

「なら、嫌だったら突っぱねて」

 私の顎を掴む、強引めいた手つき。頭の中が沸騰していて、もう、何が何だかわからない。

 私の視界が、如月くんの影に奪われる。――ぎゅ、と強く目を瞑ったそのとき、

 ――ピピピ、と軽やかなアラームが鳴った。
< 9 / 47 >

この作品をシェア

pagetop