キスは契約違反です!! ~年下御曹司と期間限定ルームシェア~
 洗い物は如月くんにお任せをして、先にお風呂に入った。今日はパソコンに長時間向かっていたせいか、肩がひどく凝っている。顎先が沈むまでお湯に浸かって、身体を温める。入浴剤の乳白色に染まったお湯の中、足を伸ばしても、つま先が向こうに届かないくらいにバスタブがひろい。

 新しい家、探さないといけないんだよね。

 レインシャワー付きの天井、大理石模様の壁、高級感のあるガラスドア――ラグジュアリーなバスルームを見回して、ゆっくりと息を吐く。

 いろいろな出来事が積み重なって、今はここで暮らしているけれど。

 夢みたいな暮らしに慣れちゃいけない。ここは如月くんのマンションで、けっして私の家じゃない。

 今の暮らしは、新居が見つかるまでの仮住まい。
 あくまでも、期間限定のルームシェア。

 身体が充分に温まったところで、バスタブを出る。身体を拭いて、バスルームを出る。

 ルームウェアに着替えて、化粧水で肌を整えてからリビングに向かった。

 ドアを少しあけたところで、如月くんの声が聞こえてきた。

「はい……ええ、わかりました」

 普段より少し硬い雰囲気の口調で、誰かと電話をしている。取り込み中なら、自分の部屋に戻ろう――そう思って、ドアを閉めようとしたところで、思いがけない台詞が聞こえた。

「では、近いうちに。婚約者(フィアンセ)と一緒に伺います」

 思わず動きを止めたところで、電話を終えた如月くんが私に気づいた。
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