キスは契約違反です!! ~年下御曹司と期間限定ルームシェア~
世界が、大きく歪んで見えた。
立っていられなくなって、玄関先に倒れ込んだ。そうしたら、部屋の奥から慌ただしい足音が聞こえた。
「先輩っ」
如月くんの声を聞いて、細い糸に縋るように指先を動かす。だけど、身体全体がふるえていて、床に手を突いて上体を起こすことはできなかった。
くずおれる私の背中に、あたたかな手のひらが触れる。先輩、と呼ばれて、如月くんに顔を覗き込まれた。その刹那、
「お姉ちゃん?」
あどけなくも聞こえる可憐な声が、如月くんの後ろから聞こえた。眼差しを必死で上向ければ、妹の勝ち誇ったような笑みが見えた。
「……また、」
私の恋を奪いに来たの。
悔しくて、悲しくて、――苦しい。
ぎゅっと眉根を寄せたところで、結衣が軽やかに笑う。
「ちょっと泣き過ぎじゃない? いい大人なのに、壮矢さんも引いちゃうよ?」
私のくちびるは引き攣れた呼吸を繰り返すだけで、何も言い返すことができない。
「ね、壮矢さん。お姉ちゃんなんか捨てちゃって、あたしにしよ? お姉ちゃんと付き合うより、ぜったい楽しいよ」
花びらみたいなワンピースの裾をひらめかせながら、結衣が如月くんに寄り添う。
私の背中をさすっていた如月くんが、結衣のほうを見た。
結衣と、如月くんとの視線がかち合う。結衣が笑みを深めて、如月くんの頬に指先を伸ばす。
強く目を瞑ろうとしたところで――パシッと鋭い音が聞こえた。
立っていられなくなって、玄関先に倒れ込んだ。そうしたら、部屋の奥から慌ただしい足音が聞こえた。
「先輩っ」
如月くんの声を聞いて、細い糸に縋るように指先を動かす。だけど、身体全体がふるえていて、床に手を突いて上体を起こすことはできなかった。
くずおれる私の背中に、あたたかな手のひらが触れる。先輩、と呼ばれて、如月くんに顔を覗き込まれた。その刹那、
「お姉ちゃん?」
あどけなくも聞こえる可憐な声が、如月くんの後ろから聞こえた。眼差しを必死で上向ければ、妹の勝ち誇ったような笑みが見えた。
「……また、」
私の恋を奪いに来たの。
悔しくて、悲しくて、――苦しい。
ぎゅっと眉根を寄せたところで、結衣が軽やかに笑う。
「ちょっと泣き過ぎじゃない? いい大人なのに、壮矢さんも引いちゃうよ?」
私のくちびるは引き攣れた呼吸を繰り返すだけで、何も言い返すことができない。
「ね、壮矢さん。お姉ちゃんなんか捨てちゃって、あたしにしよ? お姉ちゃんと付き合うより、ぜったい楽しいよ」
花びらみたいなワンピースの裾をひらめかせながら、結衣が如月くんに寄り添う。
私の背中をさすっていた如月くんが、結衣のほうを見た。
結衣と、如月くんとの視線がかち合う。結衣が笑みを深めて、如月くんの頬に指先を伸ばす。
強く目を瞑ろうとしたところで――パシッと鋭い音が聞こえた。