Happily ever after
chapter2
その日は朝からついていなかった。
西武線で起きた人身事故が元で有楽町線も遅れに遅れ、電車が遅延することおよそ1時間。
タクシーもバスもつかまらず、会社に着いた時点で2時間の遅刻。
出社したらフロアに誰もおらず、全員会議室にいたことがわかったのが昼休みが始まる直前だった。
電車の遅延を上司に報告していたため、優子の不参加はそれが原因と思われていたが、チーム内での連絡の行き違いがあったことが発覚。
さらに昼休みを過ぎたら社用のスマホがいきなり動かなくなった挙句、電源が入らなくなってしまった。
「絵に描いたような厄日ねえ」
どこかのんびりとそう呟く上司に、優子はがっくりと項垂れた。
「いくらなんでも、運が悪過ぎます」
「まだまだ続いたりして」
「勘弁してくださいよう。もうお腹いっぱいです!」
今日は金曜日。
山崎との2回目のデートの日だ。
今夜を楽しみにして1週間働いてきたのだから、災厄はここで頭打ちにして欲しい。
心からそう願った優子だったが、悲しいことに、そういう日に限って災難は続くものである。
日本橋から銀座に向かう電車に乗っている時、前にいた子どもの腕がぶつかった。
それだけなら良かったのだが、その子どもはソフトクリームを持っていたのだ。
それもチョコレートのソフトクリームである。
優子が気合いを入れて着ていた白いワンピースは、一瞬にして茶色に染まった。
ソフトクリームがほぼなくなった事に癇癪を起こして泣く子どもと、顔を蒼くして平謝りする母親を前に、優子は力無く笑うしかなかった。
「どうかお気になさらず。洗えば落ちますから」
繰り返しそう言って、気まずさを誤魔化すように優子は銀座に着くなり足早に改札を目指した。
そして、山崎と合流する前に新しい服をどこかで買おうと計画するも、その山崎と改札前で鉢合わせてしまった。
「片瀬さん!お疲れさ……」
チョコレートの染みは広範囲だった上、ワンピースの色が真っ白だったのでよく目立った。
半泣きになっている優子を視界に入れるなり、山崎は事態を察したようだ。
「あの、予約までまだかなり時間ありますから、ちょっと買い物に付き合ってくれませんか?」
気を遣わせないように最大限配慮しているのがわかる言い方で誘う山崎に、優子は一も二もなく頷いた。