Happily ever after


有楽町のルミネはよく仕事帰りに覗いて行くが、異性と来るのは初めてである。
裕樹と付き合っていた頃は、彼の職場の近くで会うことが多かった。

ふとした瞬間にその存在を思い出しては胸が痛むが、先週の山崎とのデート以降は思い出す時間が減った。
少しずつ、彼が過去の人間になっていく。


「片瀬さん、ちょっとこの辺試着してみてください。絶対似合うと思います」


手招きする山崎に近寄ると、普段の優子なら確実に買わない(正確に言えば買えない)服が大量に待っていた。


「とりあえずこれ、これ、あとこれ!あ、すみません試着室って空いてますか?」

「え、ちょ、山崎さん!?」


服を渡すだけ渡すと今度は店員を捕まえてちゃっかり試着室を押さえ、山崎は有無を言わせない笑顔で優子を放り込んだ。

男性に貢がれた経験が無い優子でもさすがにわかる。
あれはプレゼントする気だ。


(付き合ってもないのにこんなにしてもらって良いの?いや、付き合っていたとしてもやり過ぎじゃない?)


ここまでわかりやすくお姫様扱いされた経験が無いからか、どうしていいかわからない。
わからないが、嫌ではない。

とりあえず早く選ぼうと、渡された服を改めて見てみる。
焦茶の花柄のワンピース、ミントグリーンのシフォンワンピース、水色のシャツワンピ、どれも優子の好みを押さえている服だった。

着替えのしやすさからシャツワンピを選び、優子は急いで試着室を出た。


「お待たせしました!いかがでしょうか?」


優子を視界に入れるなり、山崎は目を細めて満足そうに微笑んだ。


「せっかくだからそれ着てご飯行きましょう。めちゃくちゃ似合ってますよ」


褒め方がサラッとしていたのもあり、優子は気恥ずかしくはあるもののまだ平静を保てていた。
そして予想通り、試着したワンピースは山崎からプレゼントされた。
予想外だったのは、試着していない他の服もプレゼントしてくれたことである。


「こんなにいただけませんよ!」

「でももう買っちゃったので。諦めてもらってください」

「じゃ、じゃあ今日の晩ごはんは私が出します!」

「俺の名前で予約してるのに支払いは片瀬さんってのは変でしょう。次に会う時は今日買った服を着て来てください。3度目のデートを約束してくれたら、お礼としてはじゅうぶんです」

「……わかりました。では、ありがたくいただきます」


ただの気の合う友人ではなくなってきている。
優子は山崎の甘い言葉と態度を嬉しく思いながら、言葉に出来ない不安を感じていた。

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