Happily ever after
今日のディナーデートの舞台は、東急プラザ銀座11階の一角である。
遠い昔、友達の誕生日を祝うのに一回来たきりだったが、その珍しくも美味しい味が忘れられなかった優子は、今回のデートでここTHE APPOLOをリクエストした。
山崎はギリシャ料理は初めてらしく、ワクワクした様子で周囲を見ている。
優子も夜に来るのは初めてだったので、窓の外から見える銀座の夜景に心が躍った。
「どうしよう、飲もうか迷うなあ。片瀬さんってお酒は大丈夫ですか?」
「すごく強いわけではないですけど、人並みには飲めますよ!山崎さんが飲むなら私も飲もうかなあ」
アルコールメニューを一緒に見ようと体を寄せれば、山崎からかすかにシトラスの香りがした。
よく近づかなければわからないようなほんのりとした香りだが、その爽やかな匂いにどうしようもなく緊張する。
「せっかくだから飲みましょう!それにしても、ペアセフォーネにアフロディーテ、アポロ、ギリシャ神話からカクテルの名前つけてるの、オシャレですね。味の想像つかないけど」
「あ、山崎さんギリシャ神話お好きなんですか?」
「好きですよ!ついでに星や宇宙も大好き。だから、片瀬さんが理系の人ってわかった時はそういった話しが出来るかなって一瞬期待しました」
「薬学部卒ですみませんでした」
冗談まじりにそう言えば、山崎がわかりやすくがっかりした顔で眉尻を下げた。
相変わらずノリが良くて、会話の勢いが止まらない。
2人でギリシャらしさを感じられるカクテルを頼み、味の感想を交わしつつ料理を堪能する。
レモンやハーブが効いたサラダやいくらが美味しくて、山崎と話す時間が楽しくて、気がついたらメインディッシュも食べ終わっていた。
デザートのレモンパイとコーヒーが運ばれてきたその時、テーブルの上に出しっぱなしだったスマホの画面が光った。
大学時代にインカレで出会い仲良くなった友人から来ていたLINEの文面が、勝手に目に飛び込んできた。
〝裕樹結婚したってどういうこと!?2人はいつ別れたの!?〟
デザートを食べる手を止めて、LINEを開く。
嫌な予感に心臓がドクドク脈打つが、それでも優子は現実を直視した。
直感的にインスタを開き、裕樹のアカウントを検索する。
別れてからすぐに互いにフォローを外したが、彼はアカウントに鍵をかけていないのですぐに見つかった。