Happily ever after


「私、2ヶ月前に2年近く付き合っていた彼氏と別れたんです」


周りに誰もいないという状況が、優子からリミッターを取り払った。
突然切り出したその話しに嫌な展開を予想したのか、山崎の綺麗に整えられた眉がわずかに動いた。


「別れたきっかけは価値観の違いでした。私が同棲したいって切り出したら、自分の生活リズムは崩したくない、だったら別れようって。私としては、結婚せずにダラダラ付き合っているのが嫌だったんです。だから別れました」

「さっき見てたのは、その元カレのインスタ?」

「そうです。結婚したらしいですよ」

「は??」


何を言われたのかわからないという顔で、山崎が固まった。
そのリアクションに少し心が救われる。
優子はインスタにログインし、検索履歴の1番上にある裕樹のアカウントを表示した。


「どうやら私との関係は遊びだったみたい」


言葉にしたその瞬間、改めて心臓がひりついた。
自分は同棲するかしないかで揉めたけど、この野上さつきとかいう女はきっと裕樹と同棲している。
今までしていなかったとしても、もう今は一緒に住んでいるだろう。
彼女はプロポーズされ、結婚したのだから。

一瞬、自分と彼女と、どちらの方が早く裕樹と付き合い始めたのか考えた。
しかし、考えるだけ無駄なことにもすぐ気がついた。
裕樹が選んだのは、野上さつきなのだから。


「この人、何歳なんですか?」


不機嫌さを全面に押し出し、山崎が唸るように呟いた。


「山崎さんと同い年ですよ。私の4歳上です」

「じゃあ35か。若くても許される事じゃないけど、それなりに歳を重ねた大人がこんなクソみたいな真似するなんて信じらんねえ。傷ついている片瀬さんには申し訳ないけど、あなたがこいつと結婚しなくて良かったって心の奥底から思ってます」


常に温厚な山崎からは考えられない、吐き捨てるような強い口調と険しい視線に、優子の涙が引っ込んだ。


「や、山崎さん?」

「平然と浮気をしてちゃっかり結婚するような厚顔無恥の腐れ外道ではありますが、片瀬さんを選ばなかったのだけは褒めてやります。こいつじゃ全くあなたと釣り合っていないし、何より俺があなたを口説く余地を残してくれたわけだし」

「え……え?」


話しの展開が思っていたのとはまったく違う方向性で、引っ込んだ涙が戻って来そうにない。
今度は優子が呆然としていた。



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