Happily ever after
喉の渇きで目が覚めた優子は、起きあがろうとした瞬間に強烈な筋肉痛と倦怠感に襲われた。
腹筋だけではなく、二の腕や太ももまでギシギシと痛み、上体を起こすだけで精一杯だ。
窓の外を見ればすっかり日が昇っていた。
これまた筋肉痛で使い物にならない右手を無理矢理ベッドサイドに伸ばしてスマホを掴み、時間を確認する。
8時53分、まだチェックアウトまで時間がある。
隣で静かに眠る山崎を見下ろし、優子は昨夜のあれこれを思い出し、1人で悶えた。
(やっちゃった……付き合ってもない人と!!!)
いや、問題はそこではない。
問題は、今まで経験してきたセックスはなんだったのだろうと疑問に思うほど気持ち良くなったことだ。
一体どれだけの経験を積めば、あのような技巧が身につくのか。
優子は急に山崎の恋愛遍歴が気になってきた。
(元カノ何人いたんだろ……いや、人数が多いだけじゃ上手くならないって聞くし、なんかコツとかあんのかな?運転上手い人はそっちも上手いなんて俗説あるけど、実は結構当たってたりする?)
「んー……おはようございます」
いつもより低い声が耳をくすぐり、優子は咄嗟に顔を背けた。
むっくりと起き上がった山崎は、一糸纏わぬ姿で大きく伸びをし、軽快にベッドから起き上がった。
どうやら寝起きは良いタイプらしい。
「体は大丈夫ですか?」
ペットボトルのお茶をキャップを外した状態で渡してくるマメさに感心しながら、優子は小さく頷いた。
が、受け取ろうと手を伸ばしたその時、情け無い叫び声をあげた。
「いったああああ!」
「え?!」
「筋肉痛!全然大丈夫なんかじゃない!!」
涙目でプルプル震えながらお茶を受け取る優子を見て、山崎は楽しげに笑った。
「あれくらいで筋肉痛?優子さん、普段まったく運動してないだろ」
「確かに運動習慣は無いですけども!!健吾さんがスタミナお化けなだけですからね!?私が気絶した後も起こしてそっから2回もして、寝たの3時過ぎですよ!?運動習慣があったとしても、普通そんな何時間も運動したりしませんから!」
「俺、徹夜でバッティングセンターとかボーリング場で遊ぶことあるんだけど」
「うわ、ガチモンのスタミナお化けだ」
引いたようにベッドの端に逃げれば、逃がさないと言わんばかりの力で山崎が抱き寄せてきた。
「嫌だったらすみません。もうしない、とはさすがに言えないので、次は頑張って1回で終わらせます」