Happily ever after
これからも身体を重ねることを前提としたその発言に、優子はつい考え込んだ。
山崎のことは異性として意識している。
これまで付き合ってきた男たちの誰よりもお姫様扱いしてくれるし、セックスも上手い、さらに稼ぎも良さそうだ。
告白を断る要素なんか、一つもない。
だというのに、なんだか乗り気になれない。
こんな好条件な男とはもう2度と巡り会えないかもしれないのに。
「すみません、少しお時間をいただけませんか?付き合ってもいない人と継続して身体を重ねるのは、ちょっと心がついていかないというか……やることやっといて、今さらですが」
「もちろんです。いくらでも待つので、じっくり考えてください。付き合っても良いという言葉を引き出せるよう、努力しますので」
どこまでも爽やかな山崎の笑顔に、優子は申し訳なさを感じると共に自身の心境に疑問を抱いた。
裕樹と別れてまだそんなに時間が経っていないから即答出来ないのか、それとも山崎のことは実はそんなに好きでは無いのか。
「優子さん、自力でシャワー浴びれますか?」
「無理って言ったら?」
「俺が髪洗ってあげます」
サラッとした口調にはいやらしさがない。
おそらく山崎は、本当になんの下心も無しに入浴を手伝ってくれるだろう。
「じゃあお願いしますね。私、筋肉痛酷くて今何もしたくないので」
まだ出会って数週間だというのに、昨日身体を重ねたばかりだというのに、こんな風に甘えられる自分に優子は驚いた。
「はいはい。浴槽浸かる時間は無いから、手早くシャワーで済ませますからね。じゃあ掴まって」
そう言うや否や、山崎の左腕が膝下に入り込んできた。
人生初のお姫様抱っこに驚いているうちに、広々とした浴室に到着する。
その後は約束通り手際良く全身を洗われた。
いやらしいことをまったくされなかったどころか、筋肉痛に効くマッサージをしてもらい、髪まで乾かしてもらった。
山崎との時間は心地良い。
心地良すぎて、怖いくらいだ。