おやすみなさい、いい夢を。
「……分かってるのか」
自分でも驚くほど低い声が落ちる。
「そのうち、誤魔化しすらできなくなるって」
病室に漂う消毒液の匂いが、ひどく冷たく感じられた。
時計の秒針が刻む音が、やけに鮮明に耳に響く。
「……体重が減って、ろくに話もできなくなって。
そんな状態で“大丈夫”なんて言い続けたって、誰も信じやしない」
言葉は刃物みたいに鋭く空気を裂いた。
言いながら胸の奥がきしむ。
だが、それでも止められなかった。
理緒は目を伏せ、布団の端を指先でいじりながら、かすかに笑った。
「……先生ってさ。本当に残酷だよね」
その笑顔が痛々しくて、視線を合わせることができなかった。