おやすみなさい、いい夢を。

夢 Sakura Side.



一緒の大学に行きたいね。
理緒と私は、よくそんな話をした。

お互い、何になりたいとか、将来を具体的に描いていたわけじゃない。
でも、同じ大学に通って、
高校のときみたいに、たまにお昼ご飯を一緒に食べて、
好きな本の話とか、好きな人の話とか――
そんな“日常の延長線”を、何となく思い描いていた。

私も理緒も、都内ではそれなりに名の通った進学校で、
成績も悪くなかった。
何にだってなれる、どこへだって行ける。
努力さえすれば、夢は続いていく――そう信じていた。

……でも、今になって思う。
信じていたのは、たぶん私だけだった。

理緒はきっと、
その頃からもう、自分の時間が限られていることを
どこかで分かっていたのだと思う。

あの頃の私には、それが見えていなかった。
見ようともしなかった。
――“きっと大丈夫”って言葉のほうを、信じたかった。

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