おやすみなさい、いい夢を。

カフェラテの記憶 Sakura Side.




『一時退院、決まった。1週間後』

理緒からそんな連絡があったのは、あの日――あの急変の夜から、ちょうど一週間ほど経った頃だった。

『申し訳ないけど、しばらくICU管理になる。……家族以外は規則で面会できない』

先生がそう言っていたから、私はてっきり数週間、もしかしたらもっと長く会えないのだと思っていた。
だからこそ、スマホの画面に映るその一文が、信じられなかった。

退院。

1週間後といえば、ちょうど夏休みが明ける頃だ。

「一時」とはついているけれど、退院という響きがあまりに明るく聞こえて。

……あの日以来、ずっと心の奥で形にならずに沈んでいた不安があった。
「理緒は、もう治らないんじゃないか」――そんな考え。

でも、その一言で全部かき消えた。
『やっぱり理緒は治るんだ』
『ちゃんと良くなってるんだ』

そう思った瞬間、胸の奥が熱くなって、視界が滲んだ。



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