隠れ許嫁は最終バスで求婚される

「いっきお兄ちゃんはあたしの初恋だよ。年齢が離れてるからどうせ妹にしか思われないだろうってこの気持ち封印してた。諦めて年齢の近い男のひととつきあってみたりしたけど、いつもダメだったんだよ。引っかかるのは悪いオトコばかり。お兄ちゃんのせい……ンっ!」

 あたしを抑えつけるように背もたれに両腕を押し付け、お兄ちゃんが唇を奪う。突然のキスにあたしは目を白黒させる。

「シー。大きな声出したらバレるぞ」
「ンっ」
「モネちゃんがイヤならやめるけど。続けてもいいってことだな?」
「え」
「いまから()()を俺だけのモノにする、ってこと」
「ふぇ?」

 とろんとした表情でお兄ちゃんを見上げれば、彼は獣のように瞳をぎらつかせてニヤリと笑う。この笑い方、悪いオトコだ。
 そしてあたしはこくりと頷く。この先に何が待ち構えているのか、ほんのすこしだけ期待して。だってもうオトナだもの。
 施錠されたバスのなか。

 ――この気持ちからは逃げ出せないし、もはや逃げられもしないのだ。
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