隠れ許嫁は最終バスで求婚される

『モネちゃんは簡単にオトコに騙されそうで心配だなぁ』

 かつて実家の隣に住んでいたお兄ちゃんの言葉を思い出す。そうですね、高校卒業してから何度痛い目を見てきたことか。それもこれもお兄ちゃんのせいですよ。高校卒業とともに上京してからこっちにぜんぜん帰ってこないって隣のおばさん言ってたけど、いまどこで何をしているんだろう。大地主の息子だからすこしくらい遊び歩いていても痛くも痒くもないらしいけど、歳のはなれた幼馴染みに連絡先を教えることもなく進学してしまった彼のことをあたしはいまも忘れられずにいる。だって初恋だったんだもの。だけど五歳年下のあたしは最後まで彼の妹ポジションに甘えていた。今度彼が戻って来るときはお嫁さんになる女性を連れて帰ってくるときなんじゃないか、いや、土地を売ってそのお金で都会に引っ越してしまうんじゃないか、とか、ざわざわする気持ちはいまも残っているけれど。そんな初々しい気持ちを封印したくてほかの異性と付き合っては裏切られている。自分は本気だったのに向こうはセフレとしか思っていなかったとか、二股三股されて彼女さんと男の敵だと意気投合してクズ男を成敗したりとか、本命が別にいるとか……ってこれはあたしか?
 まあ男運がないのは事実なのだろう。今回は結婚前提に同棲しようって言ってた男に弄ばれてしまった。もはや笑うしかない。
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