隠れ許嫁は最終バスで求婚される
「いらっしゃい、モネちゃん。そんなに堅苦しくならないで」
「えっと、ご無沙汰しております。今日はその……ご挨拶に伺いました」
息を整えるように深呼吸する。
そんなあたしを横目に、一季さんがまっすぐに綾子さんへ頭を下げる。
「母さん。正式にモネと結婚しようと思う」
その一言で、あたりの空気がわずかに変わった気がした。
綾子さんは驚いたように目を細め、それからゆっくりと首肯する。
「……あら、やっぱりモネちゃんだったのね」
そう言った声には、少しだけ懐かしさが混じっている。あたしは彼女のまるですでに知っていたかのような言動に首を傾げる。「やっぱり」ってどういうことだろう。
困惑するあたしを微笑ましそうに見つめた綾子さんは、ふと窓の外へ視線を向けながら説明してくれた。