隠れ許嫁は最終バスで求婚される
結婚式で、愛を誓おう ――happy ending
等身大、いやそれ以上のおおきさがあるピカピカに磨かれた鏡の前に立って、白いドレスに身を包んだ自分の姿と対峙する。
信じられないくらい緊張で心臓がバクバクしている。なんだかあのときの花火の音みたいだ。
大切な記憶はふとした瞬間に顔をのぞかせて、自分の中でそっと息づいているよといつだって教えてくれる。
地元の有名な結婚式場を丸一日貸し切って、あたしと一季さんは結婚式を行うことになった。挙式は昼過ぎからだが、新郎新婦は朝から控室で最後の仕上げを行っている。
控室の窓の外からは、新郎の親族が経営する会社から各々届けられた祝いの花を運ぶスタッフたちの姿が見える。一季さんもそのうち、父親が経営に携わっているバス会社の取締役につくのだろう。彼は運転手の仕事を続けられるのなら役職が加わるのもまんざらではないらしい。
あたしもしばらくのあいだはいまの仕事を続ける予定だ。
かすかに響くのは祭囃子ではなく時計塔の鐘の音。
いよいよ結婚するのだという実感が湧きあがる。