お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
『私は幼い頃に心臓の病気が見つかり、小学生の時に大きな手術を受けました。…そのおかげで、今こうして生きることができています』

桜賀は表情を変えず、自分の過去を話し出した。

『…でも、ある人との出逢いがなかったら……もしかしたら私はここにいなかったかもしれない。…生きていられなかったかもしれません』

その言葉に、会場の空気が少しこわばった気がした。

『…当時、同室で入院していた子が、私が手術を受ける少し前に、手術中に亡くなりました。…子供だった私は、手術を〝必ず元気になれる魔法〞の様に思っていたので、その現実は、私の手術に対する信用を失わせました。そして私は、そこで初めて死に対する恐怖を感じたのです』

その思いも寄らぬ内容に、誰もが言葉を発する事ができないでいた。

『…それからは「手術を受ければこの先も生きられる」と言われても、怖さやネガティブな感情の方が勝ってしまい、手術予定日が目前に迫ったある日、手術を受けたくない私は車椅子で病室から抜け出しました。とにかく逃げたかった。…しかし、その逃げた先で、おじいちゃんのお見舞いで病院に来たという小学生の女の子に出逢ったんです』

言葉の最後、少しだけ桜賀の表情が緩んだ。

そして、それって私のことでは…とドキリとすると同時に、隣にいる葵からの視線を感じた。

『病室を抜け出したものの、逃げてしまった事も含めて色々と怖くなり、病院の中庭の片隅で私は一人で泣いていました。そんな私を迷子だと思って声をかけて心配してくれた見ず知らずのその女の子に、私は泣きながら不安を打ち明けました』

…そうだったね。
あの時、桜賀は一生懸命、気持ちを話してくれたよね。
不安と、恐怖と、生きたい希望と。

『その子は、私の取り留めのない話を最後まで聞いてくれただけでなく、その翌日に私の病室に来てくれて、私に手作りのお守りをくれたんです。「手術をしたら、病気は治る。手術だってこのお守りが絶対に守ってくれる。私の元気と気持ちが入ったこのお守りなら絶対に大丈夫!元気になるからね!」と言って』

そしてまた少し、桜賀の表情が穏やかになった。

『…これが私は嬉しかった。家族や先生に言われるのより何倍も心に響いたし、この〝絶対に守ってくれる〞という言葉が、何よりも心強かった。…私はこの子のおかげで恐怖に立ち向かう強い気持ちを持つことができたんです。…だから、私が今、こうして生きていられるのは、そのお守りをくれた子のおかげなんです』

桜賀…そんな風に思っててくれたんだ…


『…世の中には、この〝誰かの支えになりたい、守りたい〞と願う気持ちがある事を知り、それは、私がこの仕事に就く大きな理由の一つとなりました』


それらの言葉に涙が溢れそうになっていると、桜賀がスーツの内ポケットから何かを取り出した。

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