お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
「おじゃまします…」

初めて上がる桜賀のお部屋に少し緊張しながら足を進める。

「どうぞ。奈都子の部屋と違って殺風景だし散らかってるけど、そこは目をつぶってほしいかな」

「アハッ、そんなの気にしないって。ていうか、すごく整頓されててきれいなお部屋だね」

「そう思って貰えたのなら良かった。じゃあその辺テキトーに座って……じゃなかった、えーと…そのクッションのとこでよければ座ってて」

「…その『じゃなかった』って何?」

「あー、姉貴に言われたんだよ。『お前は女心に気遣いできなさそうだから、付き合えたとしてもすぐにフラれるんじゃないか心配だ』って」

「香奏(かなで)さんに?」

「あぁ」

「へぇ…」
この姉弟はどんな会話をするんだろう、想像つかないなぁ、なんて考えていたら、桜賀がキッチンで飲み物を用意しながら話してくれた。

「姉貴って、俺以上にサバサバしてるくせに、そういう所はちゃんとおさえてるっつーか器用だから、それが不器用な俺はよくダメ出しされる」

「あはは。弟のこともそこまで気に掛けてくれるなんて素敵な方だね」

「素敵かどうかは分からねぇけど、まぁ確かに気が利くし、視野が広くて頭の回転が早いのは認めるよ」

「そうなんだ。…確かに今日画面越しに見させてもらっただけでも、きっとお仕事のできる方なんだろうな、って思ってたよ」

「そっか。…あのさ、姉貴と俺って社長と副社長の補佐につくことになっただろ?それって会社の運営に関わるためなんだよ」

「えぇ!? …それはまたいきなりすごい話だね…」

「実は入社前からそれは決まっててさ」

「そうなの!? でも同族経営を進めてく訳ではないんでしょ?…あ、もしかして桜賀は社長の座を狙ってるとか?」

「いや、そこまでの話じゃないんだけど、経営には携わって欲しいとは言われててさ」

「そうなんだ…。でもそれなら何で最初から本社に行かなかったの?新人研修のあと」

「だって、仕事の主軸でもある営業の現場を知らない奴が経営に携わるなんてあり得ないだろ?だから最低2年は営業として現場の実情を見て勉強してさ。…はい、無糖のアイスティー。これも奈都子の好きなのだと思うけど」

シンプルなグラスに入ったアイスティーを2つテーブルに置くと、桜賀が私の向かいに座った。
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