お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
「ありがとう、いただきます。…ほんとだ、この香り、私の好きな紅茶ブランドのアールグレイだね。それにしても、何で桜賀は私の好きなものをそんなに知ってるの?あっ、もしかして私が好きなソフトクリームも知ってたとか?」

「あぁ、奈都子が好きだって言ってるのを覚えてただけだよ」

「よく覚えてたね……私は桜賀に言ったことすら覚えてないのに」

「ふ…好きな女のことだからな。でも姉貴の記憶力はもっとすごいよ。東央大の法学部を首席で卒業した位だし」

「え!? とっ東央大!? あの〝未来の日本を率いる頭脳集団〞とも言われる東京中央大学!? しかも、ほほほ法学部首席!?……うわ…世界が違い過ぎる…」

同じ〝大卒〞でもレベルが全然違うことにクラリと目眩を覚えた。

「ちなみに俺も東央大、法学部卒。会社では公表してなかったけど。あ、俺は主席じゃないからな」

ハイー!?

「そうだったの!?……なるほど…頭のいい人なんだろうな、とは思ってたけど…そっか、東央大法学部…それで桜賀は法律に長けてるんだね。それでいて勉強家だからお客さんにも信頼されてるんだろうな」

「俺、勉強家か?」

「うん。だから毎月営業成績もトップだったんだな、って納得!」

「あー……まぁ必死に頑張ってたし」

「頑張ってるんだろうなぁとは思ってたけど、必死には見えなかったよね。いつも飄々としてて」

「そりゃあな、好きな女に〝ガツガツ頑張ってます!〞みたいなとこは見せたくなかったからな。…ま、とにかく奈都子には負けらんなくて、マジ頑張ってた。あぁ、もちろんお客のための頑張りだからな」

「ていうか、そんなに私に負けたくなかったの?負けるのが悔しかったの?」

「そうじゃねぇよ。だって俺が勝てば『命令』っつって、堂々と2人で飯に行けるだろ?俺にとっては好きな女とデートできる数少ないチャンスだったからさ、負けたくなかったっつうか。それに、奈都子が勝って「もう食事は行かない」って命令を下されたら…とか考えたら負けてらんねぇ!って思ってさ。あ!けど、奈都子の営業理念の通り、俺もお客さんにとって無駄になるようなものは一切勧めてないからな。それは信じて欲しい」

そう言うと残りのアイスティーを一息で飲んだ。


ふふ、そうだったんだ。
桜賀もデートって思っててくれたんだ…

それもだけど、私の営業に対する気持ちを慮ってくれたことが何より嬉しかった。


「ありがとう。やっぱり桜賀はすごいね」

自分の利益も考えつつ、ちゃんとお客さんの事を第一に考えてるんだもん。それでしっかりと結果を出すのだから、本当に尊敬する。

< 119 / 267 >

この作品をシェア

pagetop