お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
耳障りな音を立てた電車はホームに停車したものの、『ドアが開くまでしばらくお待ち下さい』というアナウンスが流れてから数分は経っている。
まだかな…と少しだけ体をよじってドアの方を見た時に、桜賀の手がまだ私の肩を抱いてることに気がついた。
これ…「もう停まってるから大丈夫だよ」って言った方がいいのかな…
…でも…まだこのままでいたいな…
…でも…言わないのも変だと思われるかな…
などと迷っていると『まもなくドアが開きます』とアナウンスが聞こえ、その直後、桜賀に「奈都子」と名前で呼ばれた。
へっ!?と驚きながら振り返ると「ほら、座れ」と桜賀に両肩をグッと押され、いつの間にか空いていた私達の前の座席にポスン!とお尻をついた。
「あっ…じゃあカバン持つよ、重いでしょ」
自分だけ座ったんだからそれくらいはしないと。
それに桜賀は今日、課長から分厚い冊子を渡されてたから、今もきっと重いはずだし。
そう思いながら手を伸ばしたのだけど「俺の大事なカバンをボケナス子に渡せるか」だって。
「持っても何もしないってば」
「いいからナス子は大人しく座ってろ」
「…はい」
桜賀はこんな言い方をしたけど、私にカバンを持たせないのは、重いから、なんだろうな。
いつもそう。
憎まれ口の裏にある優しさが見えてしまうから…
…だから好きなんだ。
…諦められないんだ。
憎まれ口を言い合うだけの仲なら好きにならずにすむのに、たまに見せるその優しさが、私の心を捉えて離さない。
はぁ……ほんっと罪作りな男!
「…何だ?」
あ、こっそり睨んだつもりがバレちゃった。
「べっつにー。何でもありませーん」
「何だよ、気になるだろ」
「何でもないでーす」
「…ふーん…ま、それは食べながら俺が納得するまでゆっくり聞かせてもらうからな」
えっ!
そ、そんなの言えるわけないって!
言い訳を考えておかなきゃ!
えっと、えーと…
目線を落とし、あれは理由にならないし、これは関係ないし…と頭を悩ませていると、「ふっ…」と上から優しい声?吐息?みたいなのが聞こえて、何気なしに顔を上げると、桜賀と目が合った。
「…なに?」
「いや、何も?」
そう言いながら、桜賀は私から目を逸らした。
そして私はまた床を見ながら言い訳を考えていたんだけど…
あー…この揺れは気持ちいい…眠くなる…