お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
「…俺も脱いでいい?」
「うん。痕…見せて」

そう言うと、響はルームウェアのトレーナーと中に着ていたTシャツをバッと一気に脱ぎ、筋肉質な上半身を露にした。

そして「これな。年月が経って分かりにくくはなってきてるけど…結構長いし、やっぱ目立つよな」と傷痕を人差し指ですーっと撫でた。

それは、響の胸の真ん中を縦に走る、少し歪んだ一筋の白い線。
もっとよく見たくて、体育座りをやめて更に近寄った。

あぁ…これが…響の命を繋ぐためにできた痕…

「俺はこの傷痕なんて恥ずかしくも何ともねぇけど、他の人には気持ち悪く見えたり……女は一緒に海とか行くの嫌なのかもなって、大学を卒業する頃にやっと気づいてさ」

「そっか……でも私は気にしないよ。…ん、違うな。〝気にしない〞じゃないか」

「…やっぱ奈都子も苦手か?」

「ううん。私は、この痕は誇りだと思うよ」
響の胸の痕を、指の腹で優しく撫でながら言う。

「誇り…?」

「うん。…あの頃…私より小さかったひびきくんが、勇気を出して、小さな身体で戦って、強い命を得た証……言わば勲章みたいなものだもん。だから私は、この痕は響が誇っていいものだと思うの」

「奈都子…」

「まだ先の話だけど……子どもができたらね、私、ちゃんと教えるんだ。これはパパの強さと命の証なんだよ、って。だから、海にもプールにも一緒に行こ……響?」

結婚すらしていない内から子どもの話なんて引かれちゃうかな…とか少し心配しながら話していたんだけど、その途中、膝立ちをした響に、いきなり頭からガバッと包まれるように抱き締められた。

そして、頭上から微かに聞こえる嗚咽…

「響…」

私は、たまにしゃくり上げて小さく肩を震わせる響を抱き締めた。
胸板も厚くて頼りがいのある大きな身体が私よりも小さく思えたから…包み込む気持ちでそっと背中に手を回し、優しく抱き締めた。


…肌と肌で直接触れているから、響の体温、そして胸を叩く強い鼓動をしっかりと感じられる。


子どもながらに死を間近に感じて、生きる希望を失いそうになるほど弱気になっていたあの〝ひびきくん〞が、大人になった今、私の恋人となって、この力強い鼓動を私の身体に直に聞かせてくれている。


「よかった…よかったね…響……元気になって…」

「…ありがと…奈都子……」


響の気持ちと呼吸が落ち着くまで、私はずっと優しく響の身体を抱き締めていた。
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