お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~

別居開始~奈都子不足な俺/side 桜賀

今日は母さんと俺と奈都子の三人で、オフィス用品の卸問屋『カミヅカ商会』へ行くことになっているんだが……あ、奈都子からメッセージが来てた。
どれどれ……

え。マジか。

「…母さん。今日のカミヅカ、奈都子は直行するってさ。お得意さんから相談したいって声がかかったみたいで時間的にランチは難しそうだって」
「あら、そうなの、残念だわ…お客様ならしょうがないけどね」
「あぁ、奈都子も残念がってたよ」

訪問時間は午後1時半だから、その前に三人で食事をして一緒に行く予定だったけど、奈都子がお得意さんから呼び出されてしまい、食事はキャンセルされてしまった。
奈都子も母さんも残念だと言っていたが、俺が一番残念だと思ってる。絶対。

はーぁ…
後で会えるとは分かってるけど、一緒にランチに行けなくて一気に士気が下がっちまった。

「あらあら、とても残念そうね」
「あぁ、マジで残念。でも奈都子がお得意さんから信頼されて慕われてるってことだもんな、そこは俺も嬉しいし、さすがだなって思うよ」
「まぁ…響がそんな風に考えられるなんてねぇ。こんな成長が見られるのも奈都子ちゃんのおかげね」
「…そうだな、そうだと思うよ。奈都子だから俺は尊敬できるんだ」

なんて二人で副社長室で話していると、ドアのノックと共に、富永のおばちゃん…もとい、副社長秘書の富永さんと、その後ろに川嶋さんが付いて入ってきた。

そして一目散に自分のデスクに向かったおばちゃんが「幹ちゃん、悪いんだけど私、これから病院に行ってくるわ」と言いながらパソコンをシャットダウンした。

「病院?どうしたの、何かあったの?」

「いやね、修一が仕事中に車で事故に遭って病院にいるって、さっき本人から電話が来たのよ」

「えぇ!? それは大変じゃない!シュウくん大丈夫なの!?」

「とりあえず声は元気そうだったけど、状態は行って見てみないと何ともね……今、同乗してた上司の方と病院にいるって言うから」

「そう…心配だわ……いっちゃん、こっちは気にしないでいいからシュウくんについててあげて」

「ありがと、すまないね幹ちゃん。それで川嶋さんだけど、午後は幹ちゃんに付かせてもらってもいい?まだ一人でできることもないし、かといって帰らせる訳にもいかないだろうし…」

「えぇ、分かったわ。今日はカミヅカさんのとこに一緒に連れて行くわね」

「悪いね…、じゃあ川嶋さん、午後は副社長についてね」

「はい、分かりました。息子さん、お大事になさって下さい」

「ありがとう。それじゃまた連絡するわね」

そう言いながら富永さんは、デスクの上にあったメガネケースなどの小物をいくつかカバンに放り入れると、バタバタと副社長室を出ていった。
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