お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~

エスカレーターに乗りながら〝そろそろ帰宅ラッシュで混んでくるだろうな。っていうか新宿駅なんだからいつでも混んでるか〞なんて考えていた時に、ふと桜賀に聞いておきたいことを思い出した。
またうっかり忘れるとこだったよ。


「ねぇ桜賀…わぁ!」

エスカレーターで後ろを振り向いたら、桜賀のきれいな顔がすぐ近くにあって驚いてしまった。

1段下だとまだ桜賀の方が背が高いのね…
あーまだ心臓がドキドキしてる。
ていうか、中1段、空けなかったんだ…


「何だ?」

「あっ急に驚いてごめん。……そうそう桜賀、お店に近い駅の出口ってどこかわかる?」

「何でそれを聞く?」

「またはぐれたら、とりあえずその出口まで行けば会えるでしょ?待ち合わせじゃないけど」

「…オマエははぐれる前提でいるのか?」

「前提じゃないけど、可能性としてなくはないからさ。ホント人混みって苦手で…人の間を縫うように進めなくて流されちゃうんだよね…アハハ…」
情けないけど。

「オマエってやつは……じゃあ、俺から離れるな」

「!」

…その言葉と共に、私の手が桜賀に掴まれるとすかさず指が絡まった。

「ほら、エスカレーター終わるぞ。足元気を付けろよ」

「っ…うん…」


ていうか、あのっ!
これっていわゆる〝恋人繋ぎ〞なんですがっ!

何で桜賀はそんなに平気なの!?
私はドキドキが手のひらから伝わりそうな位なのに…


ってそりゃそうか。
私の事なんて女とも思ってなさそうだもんね。
女性扱いなんじゃなくて、せいぜい子どもがはぐれない様にするのと一緒か。

はぁ…

まぁね、わかってるけどっ!

なんてネガティブになりながら改札を出ると、やはり駅構内は人でごったがえしていた。

久しぶりの新宿、しかもこの時間。

やはり私は何度も人の流れに飲まれそうになったのだけど、その度にグイと引き寄せてもらってたから、手を繋いだのはありがたかったし、正しかったのだと思う。

しかし、なぜか駅を出てからも私達はずっと手を繋いだままだった。

単に手を離し忘れているだけなのか、繁華街でも迷子になると思われているだけなのか…

桜賀がどう思っているのかはわからないけど、私からは「手を離して」とは言えなかった。


…言いたくなかった。


理由は何であれ、桜賀と手を繋いでいる今が幸せだから…

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