お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
すると、テーブルの上に置いてた俺の右手がガシ!と掴まれたんだ。

…?

何事かと思い視線を戻すと、俺の右手は奈都子の両手に包まれていた。
そして奈都子を見れば、その可愛い顔はピンク色に染まっている。

…??

どうした…?と不思議に思っていると、奈都子が可愛い笑顔を見せた。

「…そんな風に思っててくれたんだ…嬉しい!え、嘘じゃないよね?ほんとだよね?」
「あ、ああ…ほんとだけど…」

「!…っやだ、嬉しくてドキドキしてきた!」
「奈都子……怒ってないのか?…俺…キショくないか?」

「うん、全然。ていうか、その聞き間違いした子の話をしたのって多摩支店に配属になって間もない頃だったよね?…ほんとにそんなに前からだったなんて、嬉しくて驚いてる」

は…
「はぁ……よかった!今度こそマジで呆れられたかと……はぁ~…よかった…」

緊張が解けて脱力しながら、解いた頬杖の左手を奈都子の手の上にそっと乗せた。

「…ありがとう、奈都子。こんなアホくさいガキみたいな俺を許してくれて」
「ふふ、これくらいじゃ〝許す許さない〞の話にはならないよ」

「じゃあさ…奈都子が許さないのはどんなこと?」

「んー、そうだなぁ……許さないというか傷付くのは、信じてもらえない、…のと、裏切られること、…かな。だから、他に好きな人ができたら、その人とどうにかなる前に別れてほしいって思う」

「じゃあ俺は大丈夫だな。奈都子しか見えねぇ俺に浮気なんてありえねぇから」

「…ん…ありがとう。…あ、サンドイッチも来たし、食べよっか」
「そうだな」

おしぼりで手を拭いた奈都子が、目の前に置かれたワンプレートランチのベーグルサンドイッチを持って「アボカドとスモークサーモン、おいしそう!」と目を細めた。

「いただきまーす」
「いただきます」

俺も手を拭き、自分のプレートのサンドイッチを持ち上げ、バクリとかじる。

「響のチキンサンドイッチもトマトとレタスがたっぷりでおいしそうだね」
「うん、チキンが香ばしくて旨いよ。奈都子のはどう?」
「こっちはバジルソースなんだけど、レモンも効いててすっごくおいしい!」


なんて楽しく食事の感想を言い合っていたのだが…

食べ始める直前「俺に浮気なんてありえねぇから」と言った後の、少しだけ陰った奈都子の「ありがとう」と言った笑顔に感じた違和感は、ずっと拭えないままだった。

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