お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
乗った地下鉄の車窓はただの真っ暗な壁。
ドア付近でそれを見ながら、奈都子の腰を抱くように腕を回す。

「…このまま二人でどっか行きてぇな…誰にも邪魔されたくねぇ」

「ふふ、そこまで思うなんて」

「…正直、俺もここまで苦しくなるとは思わなかったよ。平日に会えないだけなのに」

「響…」

「…ま、1か月の辛抱だ。それに週末は逢えるんだしな」

「うん…」

「…どうした?」

「ううん、そこまで想ってもらえるなんて夢みたいだな、って」

「夢じゃねぇよ、マジで愛してるんだから」

「ん…ありがとう」

「…そろそろ駅だな。…じゃあ改札を出るまで手は繋いどくから」

「でも見られたら困るよ?」

「その時はその時。それに、黙ってられない事態になったらはっきりと事実を言うつもりだし」

「そっか、ありがとう」

その安心した表情を見て、俺は奈都子の手を取り、電車を降りた。

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