お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~

「…桜賀さんとナツは仲がいいんですね」

声のした後ろを振り向くと、足を組んでゆったりと座る間宮くんが少し笑みを浮かべて響を見ており、それに対し、響はやはりゴールデンスマイルで答えた。

「あぁ、奈都子とは同期なんですよ。去年の秋頃まで同じ支店で同じ営業として切磋琢磨してましたから」

「へえ、同期。それは奇遇だ、僕とナツも大学の同期生でしてね」

「そうでしたか」

「僕達も仲良くしてましたよ。一緒にいろんな所に行ったし。そうそう、ナツってこの見た目の通り、家庭的で料理がうまいんですよ、知ってました?」

はぁ!? 仕事の場で何を言ってるの!?
まったく…

「間宮さん、ここはお仕事の場ですし、その様な個人的なお話は関係ないと思いますが」

「あれ、ナツは彼に僕達の仲を知られたくないカンジ?」

「…そうではなくて…」

ハァ…と心の中でため息をつくと、川嶋さんが「あのっ」と身を乗り出した。

「あの、もしかしてですけど、間宮さんと奈都子さんはお付き合いされていたってことですか!?」
「川嶋さんも。今はそういう話をする時間ではないからね」
「あっ、す、すみません!」

間宮くんが答える間もなく響が軽く川嶋さんをたしなめると、間宮くんがまた笑みを浮かべながら響を見た。

「あれ?桜賀さんも知りたくないカンジだったりします?」

…間宮くんも何でこんな挑発的な言い方をするんだろう、もう関係ないのに。

でも少し心配になりチラッと響を見ると、やはりいつものゴールデンスマイル。
…と思ったら、少しだけ目元に冷たさを感じた。

「ふっ…いえ、純粋に今は仕事をしましょうと言っているだけですよ、奈都子と同じく。…ですからプライベートな話については仕事とは別の機会に」

「あぁなるほど、分かりました、そういう事ならその〝別の機会〞で。じゃあその時にナツのいろーんなアレコレをバラしちゃおっかな。ナツも同期に知られたからって怒らないでくれよ?桜賀さんも楽しみにしてて下さいね、ハハハ」

その言い方もどうかと思うけど…と間宮くんに呆れながらチラと響を見ると、フッと少し浮かべた笑みを返すだけだった。

「では仕事の話に戻りましょう。副社長、全ての確認が終わり、変更や交換もなく、これら全てを納品ということでいいですか?」

「そうね。奈都子ちゃんもいいかしら?」
「はい、よろしくお願いします」
「じゃあ間宮さん、納品日などについては私の方から東野さんに伝えておくわね」

「かしこまりました」

「…では今日はこれで失礼いたします」

「そうですか、時間がおありならもう少しお話ししたかったんですがね…残念です。ぜひ近い内に機会を作ってまたお会いしたいなぁ、桜賀さんと」

間宮くんのその誘いに、響は薄く笑みを浮かべた会釈で軽く返すに留め、それから私達は間宮くんの後について会議室から玄関へと歩き始めた。

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