お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
さてと。終業時刻までまだ時間があるし、私は支店に戻って、午前中に受けた相談のプランニングをしないとね。

響たちは川嶋さんの足のケガもあるから、3人でタクシーで本社へ戻るというし…

「じゃあ私はここで」

「あぁ、お疲れ。支店まで気を付けて行けよ」

「ん、ありがとう。…副社長、この度はこの様な大事なお仕事を任せていただき、ありがとうございました。とても楽しかったですし、いい経験になりました」

「いいえ、お礼を言うのは私の方よ。細かい所まで気付いて指摘してくれて本当に助かったもの。さすが奈都子ちゃんね、チーフに選ばれるだけあるわ」

「ま、奈都子だからな、当然っちゃ当然だけど」

「ひ……桜賀、褒めても何も出ないよ?」
危なっ、響って言っちゃうとこだった。

「ハハ、んなの期待してねぇって」

そう自然に笑う響に私も自然な笑顔を返すと、ここで存在を無視するのもあれだしね…と川嶋さんに声をかけた。

「足の痛みは大丈夫ですか?長い時間で大変でしたよね、もし痛みが酷かったら早めにお医者様にかかった方がいいですよ。私もくじいた時は早く行けばよかった、と思ったので、どうぞお大事になさって下さいね。…では失礼します」

そして丁寧に頭を下げると私は三人と別れ、複雑な気持ちに翻弄されながら一人、多摩支店へと向かった。


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