お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
「…辛かったよな…」
響は真剣に私の話を聞いてくれて、途中から優しく肩を抱いてくれていた。
「当時はそれなりにね。でも回りの人達は意外と私と先生のでっち上げの話を信じてなかったから、そこは助かったかな」
「そうなんだ。何で?」
「ニイナさんと同じ学部の子が教えてくれたの。彼女は狙った男性に彼女がいると、そういう嘘を男性に言って別れさせるんだって。向こうの学部ではそれなりに有名だったみたいだけど、私達の学部では全然知らなくて。それで、その教えてくれた子達がこっちの学部でも『あの話はでっち上げだ』って広めてくれてたの」
「へぇ、それは良かったな。…じゃあ騙されたアイツがバカだってことだ」
「信用されなかった私も私だけど…」
「いや、奈都子に非はないよ、アイツが流されやすかっただけの話。…そうか。今日の昼、許す許さないの話の時に、信じてもらえないのと裏切られる事が傷付くって言ってたのは、これが理由だったのか…」
「うん…」
「なら大丈夫。俺は絶対に奈都子を裏切らないし、信じてるから」
少し身体を離して私をしっかりと見て言う響に、正直に伝えた。
「…その言葉をね、当時…間宮くんも言ってたの」
「!…あぁ、だから…」
「え、何?」
「いや、昼もそう言ったら、少し笑顔に陰があったからさ、ちょっと気になったんだよ。…そっか…同じこと言われても前例があるんだもんな…」
響…そんな些細なところに気付いて…
「でもね、響を信じてない訳じゃないの。むしろ信じきってるんだけどね…」
「ん、それも分かってるから大丈夫」
「響…」
「じゃあさ、奈都子は本当にアイツの事は何とも思ってないんだな」
「うん。むしろ苦手に思ってる」
「そっか…よかった…」
「そんなに気になってたの?」
「うん…なんか自分でもワケわかんなくて…何に対してなのかわかんないけど、すげぇイライラして…無性に奈都子にぶつけたくなったり、すげぇ会いたくなったり」
「それって、もしかして嫉妬…?」
「え…」
「私の元カレかもしれないと思って、知らない過去とか私の気持ちに不安になった…とか?」
「…そうなのかな……初めてなんだよ、こんな自分でもワケわかんなくてぐちゃぐちゃしてさ…。嫌な気持ちと、無性に奈都子を独り占めしたくなる気持ちとかがぐちゃぐちゃすんの。俺だけの奈都子なのに、って」
はぁ…、と片手で顔の半分を覆う響を、今度は私が優しく抱き締める。
「ありがとう。そんなに私を想ってくれてるんだ…」
「当たり前だろ。こんなに愛してるんだから」
「…まだイライラする?めちゃくちゃに抱きたいって思ってる?」
「いや、話を聞いたらすげぇ不思議なくらい落ち着いた。…抱きたいとはいつも思ってるけどな」
私の頭を撫でて言うその声と調子はもう普段の響で、ようやく私も心からホッと安堵した。
「それならよかった」
「ありがとう。…それで川嶋さんなんだけど」
その出てきた名前に、ビク、と心臓が反応した。