お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
会合は6時からで、2時間もあれば終わるとメッセージにあった。
けど、まだ何の連絡もない。

さすがに終わってるよね?もう9時だもん。

早く会いたいよ。


不安はあるけど…

会って、ちゃんと言葉で聞きたい。
目を見て、ちゃんと話し合いたい。

そして…
愛し合えてるんだ、って…安心したい。


作った二人分の夕飯を冷蔵庫にしまいながら、ふー…と長い息を吐いたその時、こたつのテーブルに置いてある私のスマホの着信音が鳴った。


あっ、響からだ!

「もしもし?響?」
『…奈都子』

…あぁ、響の声だ…

「お疲れ様、遅かったね。今、会合が終わったの?」
「いや……会社には戻ってるんだけど、川嶋といて」


…え、川嶋さんと…?

ドクン、ドクン、と心臓の震えが身体全体に広がり、それは声にまで表れた。

「ど…どうして…一緒に…?…今も近くにいるの…?」

『いや、今は〝仕事の電話〞だからっつって少し離れてもらってる』

「そう…」

『それで、悪いんだけど、これから川嶋を自宅に送ってくから』

「えっ!?…どうして…?」

『最近、川嶋がストーカーにつけられてるらしいんだ。今日も帰ろうとしたら会社の近くにいたらしくて、会社を出るのが怖くて通用口で残ってたとかで』


ストーカー?

あ!…それってもしかして…

以前、上田さんが言ってた言葉が走馬灯の様に駆け巡る。

〝アイツ、落としたい男ができると自宅に来させるんですよ。飲み会なら酔ったとか理由をつけて自宅まで送らせて。特に「ストーカーに狙われている」って言葉を出せば男は送らざるを得ないですから〞

〝それで、家に着いたら「お礼に上がって下さい」とか上手いこと言って、中に入らせちゃったらもう…アイツの勝ちですよ〞


そっか…

「ねぇ響…そのストーカーの話は本当なの?」

『え?奈都子は疑うのか?…何で?』

あっ…

そうだよね、もしストーカーの話が本当だったら…それは怖いよね…

「…ううん…何でもない。…わかった、じゃあ少し遅くなるってことだよね」

『…あぁ、そうだな…』

「…車で送っていくの…?」

『いや、電車で』

「うん…わかった。…気をつけてね」

『あぁ…また連絡する』

そう言うと、響の方から通話を切った。


…何だろう…

響の声の雰囲気とか…

ちょっとそっけない言葉とか…


会いたいのに…
不安な気持ちだけが増えていくよ…

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