お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
そして話し終わると、響はこたつのテーブルに肘を乗せたまま頭を抱えて下を向いた。
「はぁ……ほんとに何やってんだ…俺は……こんなに…奈都子を…悩ませて…苦しめて…」
それは少し涙声にも聞こえた。
…その時、ふと聞き忘れていた事を思い出した。
「あの、もう一つ聞いてもいい?」
「あぁ、何でも言ってくれ」
そう言って、顔を上げて私を見た響に問う。
「差し入れした時、響がそっけないと思ったの。目を見てもそらされた気がして…」
その違和感は、私を不安に落としたきっかけとも言えるのに、なぜかすっかり抜け落ちていた。
すると、響はぽつりぽつりと話し出した。
「…もしあの時……あのまま奈都子の目を見てたら…」
「うん」
「自分が抑えられなかったと思う…」
「えっ?」
「ごめん…すげぇ情けないし…言い訳になるけど…」
「ううん、言い訳だなんて思わないから」
「ん……ありがとう。…あのさ……俺…こんなに仕事に押し潰されると思わなかったんだ」
「うん」
「今って年度末だろ?副社長に上がってくる業務も多くて……俺にとっては母さんの補佐について始めての年度末で、母さんやおばちゃんに聞かないと分からないことも多くて…」
「うん」
「それでもその仕事だけならまだ精神的にも余裕は持ててたんだ。けど…」
「うん」
「こう言うと人のせいにするみたいで情けないけど……おばちゃんが来れなくなって、その分の業務も増えて…それも決算絡みだと分からないことばかりで…」
「うん…」
「しかもその上、何もできない川嶋の世話まですることになって…言い方は悪いけど、本当に邪魔されることが多くて」
「うん…」
「時間の余裕がないと心の余裕もなくなってきて……言葉を交わさなくても…奈都子には分かってもらえてると…勝手に甘えてた……」
「うん…」
「俺もすげぇ会いたかった。奈都子と一緒に暮らしてれば、こんな仕事の苦労も乗り越えられるのに、とか思ってた。…けどそれは結局、現実からの逃げだし、考えるだけ余計に自分を苦しめてたから……できるだけそういうことは考えないようにしてた」
「うん…」
それでメッセージも少なかったし、そっけなかったんだ…
それだけ我慢するほど忙殺されてたってことなんだね…
「そんな時に奈都子に差し入れもらって、無理するなって言われて…本気で心配してくれてんだって…」
「うん…」
「同期じゃなく、恋人としての言葉が泣きそうなくらい嬉しくて、何もかも忘れて抱き締めたかった…」
「…ん……」
その気持ちを考えたら、じわりと涙が滲んできた。
「けど……それと同時に、張り詰めてた何かが崩れそうな気がして……それで慌てて…そんな態度を取って…」
「そうだったんだね…」
「ごめん……俺が何もかも未熟で余裕がなくて…言葉も足りなくて……そのせいで奈都子に迷惑をかけて……なんて…いくら謝っても誤解とはいえ奈都子に悲しい思いをさせたことは消えないけど…」
「ううん!…ごめんなさい……私も響のお仕事の忙しさとか全然わかってなくて…私の気持ちばかり優先させて……勝手に川嶋さんに振り回されて……勝手に不安になって…ごめんなさい……もっと早く…ちゃんと…聞けばよか…っ……」
溢れ出た涙がぼろぼろと遠慮無しに頬を伝う。
「奈都子……抱き締めたい……いい?」
「…うん…っ」
涙でぐしゃぐしゃの顔でそう答えたその直後、私は座ったまま、響の腕の中にいた。
「あぁ…奈都子…奈都子だ……この感触と匂い…俺の奈都子だ…」
私の身体と頭を、存在を確かめるように響は撫でる。
「響…」
フレグランスの香りではない、ほんとの響の匂いに包まれると〝俺の奈都子〞という言葉が胸に響いて、もう涙が止まらない…
「愛してる……もう絶対に離れないからな…絶対に奈都子から離れるもんか…!」
「響……私も……私も愛してる…!」
私はこの腕の中にいていいんだね。
響に愛されてるんだね。
よかった…
よかったぁ……
漸く心の底から安堵すると、響の腕と胸の温かさもあってか急に眠気が襲ってきた。
そしてその睡魔に勝てず、そのまま響の腕の中で意識を手放した。
「はぁ……ほんとに何やってんだ…俺は……こんなに…奈都子を…悩ませて…苦しめて…」
それは少し涙声にも聞こえた。
…その時、ふと聞き忘れていた事を思い出した。
「あの、もう一つ聞いてもいい?」
「あぁ、何でも言ってくれ」
そう言って、顔を上げて私を見た響に問う。
「差し入れした時、響がそっけないと思ったの。目を見てもそらされた気がして…」
その違和感は、私を不安に落としたきっかけとも言えるのに、なぜかすっかり抜け落ちていた。
すると、響はぽつりぽつりと話し出した。
「…もしあの時……あのまま奈都子の目を見てたら…」
「うん」
「自分が抑えられなかったと思う…」
「えっ?」
「ごめん…すげぇ情けないし…言い訳になるけど…」
「ううん、言い訳だなんて思わないから」
「ん……ありがとう。…あのさ……俺…こんなに仕事に押し潰されると思わなかったんだ」
「うん」
「今って年度末だろ?副社長に上がってくる業務も多くて……俺にとっては母さんの補佐について始めての年度末で、母さんやおばちゃんに聞かないと分からないことも多くて…」
「うん」
「それでもその仕事だけならまだ精神的にも余裕は持ててたんだ。けど…」
「うん」
「こう言うと人のせいにするみたいで情けないけど……おばちゃんが来れなくなって、その分の業務も増えて…それも決算絡みだと分からないことばかりで…」
「うん…」
「しかもその上、何もできない川嶋の世話まですることになって…言い方は悪いけど、本当に邪魔されることが多くて」
「うん…」
「時間の余裕がないと心の余裕もなくなってきて……言葉を交わさなくても…奈都子には分かってもらえてると…勝手に甘えてた……」
「うん…」
「俺もすげぇ会いたかった。奈都子と一緒に暮らしてれば、こんな仕事の苦労も乗り越えられるのに、とか思ってた。…けどそれは結局、現実からの逃げだし、考えるだけ余計に自分を苦しめてたから……できるだけそういうことは考えないようにしてた」
「うん…」
それでメッセージも少なかったし、そっけなかったんだ…
それだけ我慢するほど忙殺されてたってことなんだね…
「そんな時に奈都子に差し入れもらって、無理するなって言われて…本気で心配してくれてんだって…」
「うん…」
「同期じゃなく、恋人としての言葉が泣きそうなくらい嬉しくて、何もかも忘れて抱き締めたかった…」
「…ん……」
その気持ちを考えたら、じわりと涙が滲んできた。
「けど……それと同時に、張り詰めてた何かが崩れそうな気がして……それで慌てて…そんな態度を取って…」
「そうだったんだね…」
「ごめん……俺が何もかも未熟で余裕がなくて…言葉も足りなくて……そのせいで奈都子に迷惑をかけて……なんて…いくら謝っても誤解とはいえ奈都子に悲しい思いをさせたことは消えないけど…」
「ううん!…ごめんなさい……私も響のお仕事の忙しさとか全然わかってなくて…私の気持ちばかり優先させて……勝手に川嶋さんに振り回されて……勝手に不安になって…ごめんなさい……もっと早く…ちゃんと…聞けばよか…っ……」
溢れ出た涙がぼろぼろと遠慮無しに頬を伝う。
「奈都子……抱き締めたい……いい?」
「…うん…っ」
涙でぐしゃぐしゃの顔でそう答えたその直後、私は座ったまま、響の腕の中にいた。
「あぁ…奈都子…奈都子だ……この感触と匂い…俺の奈都子だ…」
私の身体と頭を、存在を確かめるように響は撫でる。
「響…」
フレグランスの香りではない、ほんとの響の匂いに包まれると〝俺の奈都子〞という言葉が胸に響いて、もう涙が止まらない…
「愛してる……もう絶対に離れないからな…絶対に奈都子から離れるもんか…!」
「響……私も……私も愛してる…!」
私はこの腕の中にいていいんだね。
響に愛されてるんだね。
よかった…
よかったぁ……
漸く心の底から安堵すると、響の腕と胸の温かさもあってか急に眠気が襲ってきた。
そしてその睡魔に勝てず、そのまま響の腕の中で意識を手放した。