お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~

「マジか……とんでもねぇ女だな……ま、本当にあんなのに引っ掛かる男がいるのかわからねぇけど。ちなみに昨日はマンションの住民と客しか入れないエントランスで話したからな。管理人も見える所にいたし」

「それで、話したって何を?」

「俺達のこと。さすがに告白までされたら黙ったままではいられないし。ちゃんと、奈都子と俺が婚約してる事を伝えたよ」

「それで川嶋さんは…?」

「最初は、彼女がいないんじゃなかったのか、とか、嘘つきとか責められたけど、そもそも一度も聞かれた事ないから、いるともいないとも言わなかっただけの話だし。それからも結構食い下がってたけど、俺の態度を見て脈ナシと理解したんだろ、諦めてくれたみたいだな」

「そう……でも何で昨日来てくれなかったの?遅くてもよかったのに」

「あぁ、川嶋との話が終わったらすぐに実家に戻って母さんと話し合わないと、って」

「何を?」

「川嶋に奈都子が婚約者だってバラしたからさ、今後の対応を含めて」

「対応って…何か問題でもあるの?」

「…川嶋の母親って、今は親会社の専務に就いてるけど、元々はうちの会社で働いてて、母さんと同期なんだよ。何か二人の間で一悶着あったらしくて疎遠にしてたそうだけど、娘がまた母親に似てクセのある人物だって噂は聞いてたらしくて」

「うん…」

「それで母さんは、川嶋がウチの会社に来た目的が俺だと知って、俺の婚約者である奈都子に危害が及ばないように隠したかったって」

「そうだったんだ…」

「でも離れて暮らす俺達の状態を見て、結局こんなことになるなら最初から話しておけばよかったって後悔してた。奈都子にも謝りたいって言ってたよ」

「そんな謝るだなんて!…私の事をそこまで考えてくれてたんだもん…その気持ちは本当に嬉しいし、ありがたいと思ってるから」

「…それに、俺も上手く立ち回れなくてごめん。俺が奈都子の気持ちにもっと寄り添って行動すべきだったのに」

「ううん!響は本当にお仕事が大変だったんだもん、それはしょうがないよ、余裕が無くなるのも当然だし」

「…そう言ってくれてありがとな。…それで、川嶋に知られたからにはしっかりと奈都子を守らないといけないから、それですぐに母さんと今後の対策を練る必要があって、今朝も早くに戻って来たってワケ」

「そうだったんだ…それで私にごめん、って言ったんだね………私を守るために頑張ってくれてたのに…私ってば一人で勘違いして疑って……本当にバカだ……ごめんなさい…」

しゅん…と俯く奈都子に「奈都子は何も悪くないよ、言葉が足りなくてそう思わせてしまった俺が悪いんだから」と声をかけ、優しく抱き締めると「俺の方こそ本当にごめん」と改めて謝った。

そして「ていうか埒が明かないから、謝り合戦はこれでおしまい!な?」と奈都子の顔を覗き込むと、奈都子が少しだけはにかんだ。


「ん、わかった。…ありがとう」

そう言って、いつもの笑顔を見せてくれた。
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