お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~

「すみません、桜賀と言いますが、藤間さんと楢橋さんの結婚式で…」
「はい、藤間様、楢橋様の挙式でお手伝い頂く桜賀様と宝花様ですね、お待ちしておりました。それでは控室へご案内いたします」

約束の時間にホテルのレセプションで名乗るとすぐに話が通じ、近くにいた黒のパンツスーツ姿の女性スタッフが颯爽とこちらへやって来た。

「桜賀様、宝花様、本日は私、南(みなみ)が担当させていただきます。わからない事やお困り事など、何でも気軽にお申し付けくださいませ。それではご案内いたします」と笑顔で俺達を促した。

まだ挨拶程度でしかないが、南さんのその自然な笑顔と、テキパキとしつつも丁寧な言動から〝信頼できるホテルマン〞といった風格が見えた。


「挙式披露宴会場と控室はラピス館の5階になります」
南さんがピシッと伸ばした指先でエレベーターホールの▲のボタンを押し、かごが到着するのを待つ。

いよいよか、とソワソワしながらエレベーターの扉が開くのを待っていると、一人の女性スタッフが俺達の元へ来た。

「南さん、宝花様がお着替えする控室が急遽変更になったの。だから宝花様は私がご案内するわ」
「あら、小川さん。え、変更?」
「ええ。さっき間違えて控室に入られたゲスト様のお子さまが粗相をされたそうで急遽」
「そう…わかりました。…それでは宝花様、急な変更で誠に申し訳ございませんが、控室には私に代わり小川(おがわ)が案内いたします」

「はい、わかりました」
「ちなみに奈都子はどこの部屋になったんですか?」

「他の控室に空きがなかったので、3階にお着替え頂くお部屋を作りました」

「そうですか、3階の何て言う部屋ですか?」

「お着替えが終わりましたら私が5階へお連れしますので」

「…わかりました」

「それじゃ、また後でね」
「あぁ、上で待ってるな」


…俺はこの小川というスタッフに少し引っ掛かるものを感じたが、奈都子は俺に笑顔で小さく手を振り、彼女に付いて行った。
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