お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
──窓が無く、それほど広くはない部屋。

サッと見渡すと、ドアのすぐ隣には宴会場で見かける円テーブルが半分に畳まれた状態で数台置かれている。

そして部屋の奥の方に目をやると、うちの会議室にもある様な長テーブルが、畳まれた状態で数台の台車の上に積まれている。
それが全て私の背丈よりも高いって、相当の数だよね。

あぁ、ちょっとした物置代わりの部屋なのか、と理解したところで、ドアの方でガチリと音がした。

…どうやらカギをかけられたみたいね…


……ふぅ
小さく深呼吸を2回繰り返し、最後に呼吸を整えると、意を決して振り返った。

「何でここに間宮くんがいるの?」
強気な姿勢と眼差しを、目の前にいる彼に向けた。

「何でって、決まってるじゃないか、ナツを迎えに来たんだよ」

「は?…迎え?」

「水くさいよ、ナツ。そんな事情があったんなら、この前会った時にちゃんと話してくれれば良かったのに。他ならぬ僕なんだから遠慮しないでさ」

「…は?」

「僕が助けてあげるから、ナツはもう素直になっていいんだよ。もうあいつの好きなようにはさせないから安心して」

「あの…何を言ってるの?…ていうか、着替えの部屋っていうのが嘘なら早く戻りたいんですけど」

「だからもういいんだよ、素直になって。やっぱり本当に愛し合う僕達が本物の夫婦になるべきだもんな。ナツと僕の赤ちゃん…かわいいだろうな……ナツに似た女の子と僕に似た男の子に囲まれて暮らしてさ……こんな幸せな事ってないよな」

「…訳わかんないこと言わないでくれますか?私、もう結婚してますから」

「え、まさかあいつに籍を入れられたのか?」

「…入れられた?…本当に何の話か分からないけど、とにかく私は桜賀奈都子になりましたし、そもそもあなたとは結婚どころかお付き合いも無理だと言ったはずです」

それで諦めると思ったんだけど、間宮くんは笑った。

「ハハハッ、だからもうその心配はいらないって。大丈夫、あいつと離婚して僕と結婚し直せばいいだけなんだから。それにしても……ナツと結婚したいからって、いくらなんでも同意もなしに勝手に婚姻届を出すとか……あいつ、かなりヤバい奴なんじゃないか…?」


「……はぁ?」

何で?
何でこんなに話が通じないの…?

ていうか、さっきから私が間宮くんを好きみたいな言い方をしてるけど…

以前話した時に分かってもらえてなかったの…?


それに、さっきから間宮くんがブツブツと呟いてる独り言も意味不明で、目の前にいる人が得体の知れない何かにしか思えなくてゾッとする。

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