お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
「でもそうだな…ヤバい奴だし簡単には離婚に応じなさそうだよな…やっぱりそれしかないか…うん…」

と、少し考える様子を見せた間宮くんが、私の方へ振り向いた。

「…ナツ、そのワンピース姿もたまらなく可愛いんだけど、これから脱がせてもらうね」

「は…?…な…何の話…」

「今日はこのまま二人で逃げるつもりでいたんだけどさ、あいつもここにいるんだろ?もしホテル内で見つかったら、ナツは連れ戻されるだろうから、もうこれしかないな、って」

「だから…何…?」

「赤ちゃん、作ろう、僕たちの。赤ちゃんができたら、さすがにあいつも諦めて別れるだろ」

「は……ハァア !?」

「ま、ナツを幸せにしてあげるのは最初から僕だって決まってるんだし、結婚も赤ちゃんも結果的には一緒なんだし、いいよね?」

そう言うと、間宮くんが少しずつ私に近付いてきた。


何この人……イカれてる……


じりじりと奥の方へ後ずさりしていると、間宮くんがこっちに手を伸ばしてきた。

「さぁ、ナツ、今は二人っきりなんだからさ、恥ずかしがらずに僕の胸に飛び込んでおいで」

と私の手を掴もうとしたその時、室内の全ての照明がフッと消え、部屋の中は真っ暗になった。

えっ!? 停電!?

急なことに驚いたけど、すぐにこの隙に逃げよう!と決めた。

「え!? なに!? 停電か!? ナツ、どこ!? 大丈夫か!?……うわっ!」

間宮くんもいきなりの事に焦っている様で、入口のドアに行くなら今しかない!と、見えていた時の感覚を頼りに動こうとしたその時…

暗闇の中、私の腕がグッと掴まれた。


「や…っ」

間宮くんに乱暴される!

身の危険を感じた瞬間、耳元で聞こえたのは「奈都子さん、こっちです!」という女性の声。


「え?」
「こっちへ!」

すると掴まれた腕が解放され、すぐさま私の体はガードされるかの様に脇から抱えられた。

真っ暗闇の中、敵か味方かもわからないまま、もう自分ではどうにもできない状況でついて行くが、こっちの方向って部屋の奥へ向かっているんじゃ…と不安がよぎったその時、ギイッという音と共に光が差し込んだ。


っ、眩し……

何とか目を細めて少しずつ見ると、ドアの向こう側は、窓から入る太陽光に照らされたバックヤードとおぼしき通路で、後ろから押される様にそこへ出ると同時にドアが閉められたのか、バタン!ガチャリ!という音がした。

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