お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
小さくぶるりと身震いしたところに「…これでヨシっ。はい、奈都子さん着付け終わりました!」と私のすぐ後ろにいたスタッフさんが声を上げながら、てるてる坊主の布をバサァッとはためかせて取ると、もう一人のスタッフさんがコーナーのカーテンを開けた。

すると葵が私を見るや否や、バチーッと目を見開いた。

「ワーオ!やっぱナツコにバッチリ似合ってるわ!やたらおっぱいがデカいけど、それも含めて世界一カワイイ!サイッコーじゃん!」
「奈都子さん…すっごい素敵です!ウェディングのパンフに載せたいくらい素敵すぎですー!」
「だよねだよね!これに桜賀が入ったらさー」
「もうバッチリですよ!いやもう高輪のウェディングパンフに載せましょう!」

その葵と上野さんの反応に、もしや…と下を向くと、私が着ていたのは白いドレス!

「え…これ…」
「ほらほら、ナツコも見てみ!」

すると、着付けをしてくれたスタッフさんが「後ろに鏡がありますよ」と私の手を取り、その場でクルリと半回転。

「!…やっぱり、このドレスって試着させてもらったの…だよね?」

このスカートのとこのふわふわとか…
そうだよ、私が気に入ったあのドレス!

「葵、何で私がこれを着てるの?あのワンピースじゃないの?」

「まぁいーじゃん、似合っててすんごい可愛いし、それになんたってあたしのブライズメイドなのよ?色付きのロングワンピより、ウェディングドレスの方がお揃っぽくていいじゃん!」

「いやいやいや、お揃って。ブライズメイドだからこそ、白のウェディングドレスは失礼でしょうに…」

「いーのいーの、主役のあたしがそう頼んでんだからさ!」

「んー……じゃあ、もし『無礼者~!』とか非難の声が上がったら葵から説明してよ?」

「声が上がればね!じゃ、メイクもバッチリやっちゃおー!」

「もう……でもそうだよね、こういうコスプレみたいなのって中途半端にすると失礼だし、余計に恥ずかしくなるもんね」

「そうそう!」

なんて、葵に乗せられちゃってる感が否めないけど、私も本当のお嫁さんの様に素敵な純白のドレスに身を包んでいることに、とってもワクワクしているの。

だってね、これ、小さい頃から憧れていたプリンセスラインのウェディングドレスなんだもん!

ビスチェタイプの上半身は胸元が少し強調されて大人っぽいんだけど、薔薇の花びらの様に幾重にも重なったチュールがふわっふわしてるスカートはとても可愛らしくて。

しかも(これもほぼ葵の強制で)ベールも付けてみたんだけど、この、裾に広く刺繍が施されたロングベールがまたうっとり見惚れるほど素敵なの!
ドレス本体は目立つ装飾が少なくシンプルだけど、この存在感のある上品で繊細な刺繍が、ドレス全体を、厳かでありながら華やかにしてくれてるんだ。


響が見たら何て言うかな。
ふふ、いきなりこんな格好をしてたら絶対に驚くよね。前の葵の打ち合わせの時は、ブライズメイドのロングワンピしか見てなかったし。
その時は「可愛い!」ってたくさん写真に収めてくれたけど、このドレス姿も可愛いって思ってくれるかな……ドキドキ


「…よーし、ナツコも準備オッケーね。んじゃ、行きますか!」

じっくりと私のメイクを見ていた葵がスマホをいじりながらそう言うと、衣裳スタッフさん達が「それでは行きますよ~」と回りのスタッフに声を掛け、葵と私のドレスの長い裾とベールをガバ!と抱き上げた。


「あは、何だかほんとの花嫁さんみたいで緊張してきちゃったよ、ブライズメイドなのに」

「フフフ…ほんとの花嫁さん…そうよね、ほんとに…ンっフっフ」

変顔で笑う葵に「なにソレ」なんて笑いながら、私達はちょっとした大名行列みたく、ぞろぞろと【瑠璃(るり)の間】へと向かった。

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