お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
その川嶋専務の様子に少し心が落ち着くと、後ろから響が優しく抱き締めてくれた。

「奈都子…ありがとな。父さんのことも信じてくれて…」
「ううん、信じるのは当然だよ。ていうか…私…でしゃばりすぎたよね……こめんなさい」

段々と冷静になると、自分のしたことが軽率だったんじゃないかと思えてきて、身体の向きを変えると響の目を見てもう一度謝った。

「本当にごめんなさい、当事者でもないのに偉そうなこと…」

「何言ってるんだよ、俺達はもう家族だろ?その家族に対しての侮辱に怒ってくれたんだから、謝る必要なんかないよ。ありがとな、本当に奈都子が奥さんになってくれて幸せだよ、俺」

「響…」

その言葉がありがたくて、自然と涙がつうっと頬を伝ったその時、羽衣子ちゃんの通る声がホールに響いた。

「あーっ、おじちゃんがなつこお姉ちゃんを泣かせたー!いーっけないんだーっ!」

「えっ?や、羽衣子、これは違うから」
「違くない!おじちゃん、なつこお姉ちゃんを泣かすとかサイテー!」
「えぇ!? 俺が!? いや違うんだって」
「違くないし!」
「や、だから…」

そのテンポの早いやり取りに口を挟めないまま呆気に取られていたんだけど、羽衣子ちゃんにタジタジの響がかわいくて、つい吹き出しちゃった。

「ふっ、アハッ。…羽衣子ちゃん、ごめんね、響おじちゃんは全然悪くないの。私に言葉でイイコイイコしてくれたから、嬉しくて泣いちゃったんだ。誤解させてごめんね」

「そうなの?ほんとにおじちゃんにいじめられてない?おじちゃん、悪くない?」

「うん。悪くないよ。逆に私を大事にしてくれてるんだよ」

「そっかー。おじちゃん、ごめんね。サイテーじゃないからね、いいおじちゃんね」

「はは、誤解が解けてよかった。奈都子もありがと」
「ううん、ふふっ」


これで一段落ついたかな、と胸を撫で下ろしていると、川八酒販の社長さんが「な、奈都子さん!響くん!」と青い顔でやってきて、いきなり土下座の体勢を取った。


「う…うちの者共が…大事な大事なお式でとんだ無礼を働き、大変申し訳ございません!」

えっ!土下座で謝罪!?
こんなことをされるのは初めてで、びっくりして響と顔を見合わせた。

「全ては夫、父親である私の監督不行き届き!この責任は必ずや取らせて頂きますので、今日の所は何卒…何卒!ご容赦頂きたくお願い申し上げます!」

そして、長々とカーペットにつけていた頭を上げると、今度はホール全体の方へ土下座のまま体を向けた。

「奈都子さん、響さんのご家族ご親戚の皆様、そしてこちらにお集まりの皆々様にもお見苦しいものをお見せしてしまい、大変に申し訳ございませんでしたー!」

と、またカーペットに頭がつくほど低く頭を下げた。

そして、先程から呆然としたままの川嶋専務とアイミさんの腕を掴むと、二人をホールの外へ連れ出した。

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