お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
「…奈都子、起きろ」
…あ…
途中で座ったらすぐに眠気が来たんだっけ…
何だろう、すごく嬉しくて気持ちよかったんだよね…いい匂いがして…
って、もしかして…
「…私、桜賀に寄り掛かってた?」
「あぁ」
「!…それはごめん」
「いや、気にしてねぇよ」
あの匂いは…桜賀のフレグランス。
仕事中にこの香りを嗅いだことはないんだけど、一年くらい前からだったかな、今日みたいに月イチのご馳走(命令)で出掛けた時に、桜賀からふわりと香るようになったんだよね。
このメンズのフレグランスは私の好きな香りで、桜賀から香ると余計にクラリとしてしまうんだ。
とうとう電車がホームへ滑り込んだ。
…あぁ、もういつもの駅に着いちゃった。
でもこれからうちで桜賀とお酒飲むんだもんね!ふふふっ
って楽しみにてたのに、駅の改札を出たところで桜賀に「やっぱ今日は飲みはナシな」って言われてしまった。
「えー!?」
…つい素直にガッカリの声を出してしまい、慌てて「おつまみは…」なんてどうでもいいことを付け足した。
「オマエな……いいから今日はすぐに寝ろ。飲まないんだからつまみもナシ。…これ飲んで早く寝て、疲れは早い内に取れ」
と、桜賀が自分の鞄から小さな瓶を取り出し、私の手に持たせた。
見るとそれは、私はまず買わないであろう、お高めの栄養ドリンク剤。
「え…」
もしかして…私が疲れてるから?
無理させないため?
「家飲みは今度。つまみもその時に買ってやるから、とにかく今日は帰ったらすぐに寝ろ。いいな?」
じゃあ…一緒に飲む約束はまだ生きてるってことだよね?
…よかった!
でもそんな気持ちは見せられないから。
「わかった。じゃあ今度おつまみよろしくね!」
なんて、素直じゃない私はほんとかわいくないな…
それならせめて挨拶くらいはちゃんとしよう。
「桜賀、今日はいいお店に連れてってくれてありがとう。幸せな時間だったし、いい経験ができたよ。…それじゃ、私こっちだから。桜賀も気をつけて帰ってね」
桜賀のマンションは駅から東の方向だけど、私のマンションは南方向。
だから、ここで挨拶したんだけど。
「送る」
と、桜賀が並んで歩きだした。
「えっ!いいよ、酔ってないし、行き倒れにはならないから大丈夫」
「アホか」
「はぁ?」
「奈都子…女であることを自覚しろ」
「これでも自覚してますけど?スカート履いてるし」
「じゃあおとなしく送られろ」
「?…あぁ!もしかして私が暴漢に襲われるとでも!? いや、ここ商店街だし、まだ人もいるし大丈夫だって」
「…じゃあ一人で無事に帰れるんだな?」
「もちろん。送ってもらったら桜賀も遅くなっちゃうしさ。心配してくれてありがと。それじゃまた月曜に!」
と手を振って、桜賀と駅で別れた。