お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
さーて、私も帰ろ。

葵はこの週末は帰省するって言ってたし、今日は久しぶりにおうちで一人飲みしようかな。

そうだ、今朝作った塩揉みキャベツがあったっけ。
たくさん作って冷凍しておいてよかったぁ。
今日はどんなアレンジにしようかな。

なんて、おつまみやご飯のおかずを考えながらオフィスの最寄駅に向かって一人歩いていると、後ろから「よっ、ナス子おつかれ。もう帰んのか?」と声がかかった。

ナス子と呼ぶこの声は…

「桜賀、おつかれー。そうだけど……あれ?ルナさんは?一緒じゃないの?」
振り返り、歩きながらそっと辺りを伺うも、ルナさんはいない。

「何で?」
そう問う桜賀が、私と並んで歩き出した。

「さっきオフィスの通路で挨拶した時に、ルナさん、桜賀の方に向かって行ったから、てっきり一緒なのかと思って」

「あぁ、食事に誘われたけど断った」

「えぇっ!? 断った!? …あ、用事でもあるの?」

「いや、用事なんかないけど、別に行かなくていいし。…てか、そんなに驚くことか?」

そりゃ驚くでしょ。
「だって、あのルナさんから誘われたんだよ?嬉しくない?」

「いや、何も嬉しいとかはないけど。…前もそんなこと言ってたな、焼肉の時」

「だって、あれほどの美人さんとの食事だよ?嬉しいでしょ?楽しいでしょ?」

「そうとは限らねぇだろ。相手によるっつうか」

「そう…?」

「じゃあオマエはどうなんだ?」

「ん?」

「例えば、藤間(ふじま)主任に二人で食事に行かないか?って誘われたらオマエは行くか?」

「えっ、藤間主任……うーん…行けないかな」

「何で?藤間主任、かっこいいだろ?落ち着いてる大人の男だし」

「えっと…確かにいい人だし素敵だと思うけど、二人はちょっとね」

「だろ?」

「そうだね…」
まぁ〝藤間主任と二人で行けない〞のは、桜賀の言う理由とは違うんだけどね。


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