お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~

「はー、スッキリした!あっ、イカのいろり焼き、少し温めるね」

「…あぁ、サンキュー」


スーパーで買ってもらった一夜干しイカのいろり焼きを小さなフライパンで焦がさないようにゆっくり温めながら、もう一品作ることにした。

小鍋に、冷凍した塩揉みキャベツと、これまた冷凍してあったカット済みの油あげをポイポイっと入れ、そこへホタテの水煮と調味料とお水を足して数分煮れば、あっという間に煮びたしの出来上がり!

なーんて、作るのは簡単なのばっかり。
もっと手の込んだものを作って女子力を高めなきゃいけないとは思うんだけどね。

えっと、あと何かあったっけ…と冷蔵庫を覗く。
チーズときゅうりと生ハムか…
よし、コレでおつまみ作っちゃお。
巻いて切るだけの簡単レシピ。

あっ、スプラウトもあった。これも生ハムで巻いて…と。

私の好きなものしか作ってないけど…ま、いいよね。


一口サイズに形を整えた生ハムおつまみ2種、焼きイカ、煮びたしをそれぞれお皿に移し、きれいに盛りつけると、それを持ってリビングへ戻った。

「よかったらこちらもどうぞ。簡単なのばかりだけど」

生ハム巻きには鰹節粉とオリーブオイルを添え、煮びたしには白ゴマを振った。


「…これ、今作ったのか?」

「うん。作ったと言えるようなものではないけどね、簡単すぎて」

「いや、すげぇな……いただきます」


まず、桜賀が一口大のチーズときゅうりの生ハム巻きを手に取った。
そして「これをかけるのか」と鰹節粉を一つまみ乗せ、オリーブオイルをサッとかけると、一口でパクリ。


「…うん、うまい!ワインに合いそうに見えたけど、鰹節だからかな、日本酒にも合うな」

「だよね。鰹節粉とオリーブオイルはお酒に合わせたりその時の気分で」

「ふーん…意外と家庭的なんだな。買ったつまみを適当に食ってるかと思ってた」

「なっ…そんな無頓着な女に見える!?」

「ハハ、つまみにこだわるより酒を飲む方が好きなんだと思ってたからな」


はーぁ…

…どうせ私なんてそーゆう扱いだし。


「そういう扱いって?」

「……何でもない」
独り言のつもりだったんだけど、しっかり聞かれちゃってたみたい。

「何だよ、気になんだろ。つうか奈都子、料理上手いよな、手際もいいし」

煮びたしと、スプラウトの生ハム巻きを食べた桜賀が、珍しく私を褒めた。

「…ありがとう」
ま、料理とは言い難いけどね。
…なんて、褒められ慣れないせいか、つい卑屈になってしまう。


「で、何だって?」

「いや……ほんと何でもないから」

焼きイカを一つ、箸でつまんでパクリ。
うん、温かくて柔らかくておいしい。


…とにかくこの話をはぐらかしたくて、テレビのチャンネルをよく見るお笑いバラエティに変えた。

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