お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
「あはは!やっぱり最後は『鯛ひらめ』の鉄板ネタだよね!オチがわかってるのに何でこんなに面白いんだろ。あーおっかしい、ひらめ姉さん最高!」
買ってもらったお高めのナッツをつまみながら和らぎ水と交互に飲んでたけど、ほどよい酔いのおかげもあって、疲れるほど笑っちゃった。
…これならさっきの話も忘れてるハズだよね。
「はー、今日は久々にすっごいウケたぁ。もう笑いすぎてお腹いたいし」
まだ笑いの余韻を引きずりながら、残り少ない焼きイカがなくなる前に、一つパクリと口に入れた。
うん、冷めても柔らかくておいしい。今度また買ってこようっと。
「…で、オマエは俺にどう思われたいんだ?」
むごっ!
ここで話が戻されるとは思わず、危うくイカが口から飛び出すところだった。
何で忘れてないの…
「俺に女扱いされたいと思ってんのか?」
さらっと言うその言葉はまさに図星を突いており、答えに窮してしまった。
「……お…女扱いされたいっていうか……私には雑というか扱いが荒い様に思うから…せめて人並みの扱いをというか…」
「は?雑になんかしてねぇよ、女扱いだってしてるし」
…ハイ !?
「いやいやいや桜賀さんご冗談を。この前の焼肉の時も今日も…ていうか顔を合わせればいつも雑だよねー?私だけさー」
口を尖らせてブチブチ言いながら、空になったグラスに氷を多めに入れてからの手酌。
グラスの半分ほど入れて軽くステアすると…んー、ヒエヒエでおいし!
「それうまそうだな。…で、オマエはそう思ってんの?」
桜賀が空いた自分のグラスに氷を入れながら言う。
だから「思うよー、桜賀って私にばっかり意地悪言うっていうか喧嘩腰っていうかさー」なんて文句を言いつつ、そのグラスにお酒を注いだ。
「お、サンキュ。……あー…こんだけ冷えてるとまた違う味わいでうまいな」
「でしょ?でね、冷酒の時は何もかけずに食べるのが好きなんだ」
と、チーズときゅうりの生ハム巻きをそのままシンプルに食べる。
うん、おいしい!
すると桜賀も私と同じ様にパクリ。
「ほんとだ、さっきと違う。うん、フレッシュな感じが合うな」
素直に真似してくれることに嬉しく思っていると、意外な言葉を投げ掛けられた。
「けど、オマエも俺のこと男扱いしてねぇよな」
「…え?してるよ?」
「そんな感じしねぇけど」
「えっ、どうして?」
「…オマエ、俺を女友達かなんかだと思ってね?」
「いや?」
だって、好きな人だよ?
女友達だなんて思うわけがない。
「じゃあ、どうして警戒しない」
「ケイカイ?…って、あの、用心する意味の〝警戒〞?」
「ハァ…そこからかよ…」
呆れたように言うと、グッと一気にグラスを空けた。
「次はどうする?燗でもいいよ」
「いや、また今の氷ので」
「ん。…あ、ちょっと待ってて」
残ってる氷が小さくなってるのに気づき、キッチンへ向かった。