お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
せっかく来てくれたんだから、おいしく飲んでほしいもんね。

桜賀の前で立ち止まって少し屈むと、冷凍庫から持ってきた氷を桜賀のグラスとアイスペール代わりのグラスに足した。

「サンキュ。……だからさ、そういうとこだよ」

「何が?」

「警戒してねぇじゃん」

「だから何が?」
氷を入れてきたボウルをキッチンの水切りカゴに置き、リビングに戻りながら言う。


「今、オマエ屈んで氷を入れただろ?」

「うん、座るまでもなかったし。…あ、行儀が悪いとか言う?」

自分の場所に座り、グラスを持とうとしたら。

「…あのな、胸元見えてたぞ。あれ、もし下着が浮いてたらバッチリ見えてたからな」

桜賀が自分の襟元を人差し指でクイと引っ掛けて、そう言った。


えっ!?
反射的にバッ!とウェアの首元を押さえる。
もちろん今押さえた所で意味はないけど。

そっか、これ、襟ぐりは広めでゆったりしてるんだっけ…


「見たの…?」

「見 え た、の」

「そっ、それはゴメン!そこまで考えてなかった…」
ほんとに全然気付かなかったよ…

「ほらな、俺を男だと思ってねぇからだろ?だから警戒してねぇんだよ」

そう、少しだけイラだってる様に言われたから。

「だって女扱いされてないんだから、そもそも警戒する必要ないでしょ?」

そう、私も少しだけイラだってる様に言った。

でも言ってすぐに〝あー、喧嘩売っちゃったかも…〞と後悔し、桜賀を直視できないまま次の言葉を必死に探していた。

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